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「いまの天皇から繋いでいけば40年はもつ」

御厨 彼はイデオロギーがないなんて言われますけど、その分だけ実務に長けていますから。ただ、ああいう場を民間に貸すとなると、「右」の方々が黙ってないんです。私のところにも「けしからん。おやめなさい」という声が寄せられました。

林 まあ、そうなんですか。有識者会議をなさっていたときも伝統主義の人たちからかなり強い意見が寄せられたそうですね。

御厨 今回の総裁選でもそうですよね。ほとんどが「男系男子派」。結局は安倍晋三さんの意向が現在でも強く働いているんだなというのがよく分かります。

林 今でも安倍さんの意向がそんなに強く反映されているのですか。

御厨 そう思います。有識者会議のときに安倍さんに聞いたんです。「女系天皇についてどうお考えですか?」と。すると、「自分はやはり男系を推す」と。私が「だけど男系を守るには人数も少ないし、旧皇族の皇籍復帰もなかなか難しいでしょう」と言うと、「いやいや、そんなことはない。とにかく日本の天皇制というのは男系で繋がれてきたことに意味がある。いまの天皇から繋いでいけば40年はもつ。日本にはいざというときに“神風”が吹くのだから大丈夫だ」と。私はただ圧倒されましたよ。

2020年、秋篠宮さまのお誕生日に際してのご近影 宮内庁提供

林 まあ、神風! きっと安倍さんの頭のなかには、皇族がご結婚されればすぐに元気な男の子が4人くらい生まれるとか、楽観的なことばかりあるのでしょうね。

御厨 彼の政治運営というのは、基本的に全部楽観的ですから。

林 神風で思い出すのは、紀子さまがご懐妊されたときのことです。国会で女系天皇について論議していたときに当時の小泉純一郎首相がメモを手渡され、さっと一読するや固まってしまったんですよね。しかものちに男の子であることがわかって論議の流れが一気に変わりました。安倍さんからすればあれも神風なのでしょうね。

御厨 まさにそうでしょう。あのとき、有識者会議を経て国会に提出されるはずだった「皇位継承は男女問わず、長子優先」という結論に基づく皇室典範の改正案は、悠仁さまがお生まれになってお蔵入りとなりました。あれから15年、今でも問題はまったく解決していません。

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