昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

source : 提携メディア

genre : ライフ, ライフスタイル, 読書, 社会

自転車がないホームレスであればなおさらだ。それなりに増えた荷物をすべて持って、上野まで歩いて移動する意味が一つもない。なんだか東京二十三区の西部と東部が、旧西ドイツと東ドイツのように分断されているような気になってくる。西部にいるホームレスにとって東部は未知の国である。

置き去りにされたキャリーケースの謎

食休みをしてからベースに戻り、都庁下の炊き出しを受けると、たちまちすることがなくなった。「拾ったフリスビーがあるから島野君(編注:國友氏のとなりに寝ているホームレス)と三人でする?」と黒綿棒に提案されたが、働き盛りのホームレス三人がフリスビーをする光景など地獄でしかないので、二人で都庁の周りをぐるりと回ることにした。

これはホームレス生活をする前から気になっていたことだが、都内の路上にはキャリーケースが電柱に鍵でくくられていることが往々にしてある。新宿中央公園沿いを走る公園通りには、ブルーシート等で被われた荷物が固まっているが、これはふれあい通りに住むホームレスの荷物だったりする。

ではポツンと置き去りになっているキャリーケースは一体何なのだろうか。これらは、ホームレスたちが暮らす村からは少し離れた場所にあることが多い。

生活保護からホームレスに出戻りする人も

「こういうキャリーケースよく見ますけど、一体何なんでしょうか」
「ホームレスというのは得てして入れ替わりが激しいからね。生活保護に移行したりシェルターに入ったり、路上から出て行った人がこうやって荷物を置いていくんだよ」

路上から生活保護を申請した場合、全員がすぐにアパート等に入れるわけではない。生活保護受給者など生活困窮者を対象とした施設である無料低額宿泊所にしばらく入り、そこからアパートを探すことになる。そして、この無料低額宿泊所には入居者を囲い込み、生活保護費を搾取するような業者も交じっている。いわゆる、貧困ビジネスというものだ。

z