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連載完全版ドキュメント・北九州監禁連続殺人事件

2022/02/01

genre : ニュース, 社会

「信用性が高い緒方の供述と信用できない松永の供述」

 続いて裁判長の判決理由朗読は、〈第2部、緒方事件〉に移った。

 そこで松永が緒方家の被害者たちに各種証明書を書かせていた、というくだりになったところで、「O(緒方)微動だにせず。Mちょっと顔を下に、時々天井を仰ぎ見る」とある。

 各供述の信用性について裁判長は、緒方供述は「供述の変遷が少ない。基本的に信用性が高い」、松永供述は「真相の解明を遠ざけるものとして、基本的に信用できない」と断言。それに続いて、由紀夫さん事件の証拠隠滅のため、孝さん(緒方の父)と隆也さん(緒方の妹の夫)に、「片野マンション」(仮名)の配管を取り換えさせたという状況説明が行われると、松永は、「違う違う」とアピールするかのように、大げさに首を左右に振った。

小学生時代の松永太死刑囚(小学校卒業アルバムより)

 やがて緒方一家が被害者となった事件について、判決理由が個別に取り上げられていく。

 まず孝さん事件についてだったが、孝さんの死については、「被告人両名(松永と緒方)、未必の殺意は認められない」として、殺人罪ではなく、傷害致死罪が成立するとされた。

次々と「殺人罪が成立する」との判断が下されて

 しかし、それに続く和美さん(緒方の母)事件や、智恵子さん(緒方の妹)事件などは、殺人罪が成立するとの判断が下されていく。

 智恵子さん事件についての朗読のなかで、その内容が智恵子さん殺害のくだりになると、緒方は山吹色のハンカチを取り出して、目元の涙を拭い、鼻をすすった。一方の松永は手元にある分厚い書類を読み耽り、目を上げようとはしない。

 この智恵子さん事件についての評価が下されたところで、午前の部は終了した。

幼稚園勤務時代の緒方純子(1983年撮影)

 判決理由の朗読は午後1時20分より再開し、まずは隆也さん事件について触れられた。そこでの松永は手元の書類に目を落とし、緒方は真正面を向いたままだ。隆也さんが死亡する状況の説明にさしかかると、松永は履いていた緑色のサンダルを足先にずらし、バランスを取るようにしながら足を揺する。さらに裁判官が「不作為による殺人の実行行為であるといえる」と、隆也さんへの殺人罪を認定する言葉を口にすると、松永は天井を向いたり、頭を掻いたりと、落ち着かない素振りを見せる。

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