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連載完全版ドキュメント・北九州監禁連続殺人事件

2022/02/01

genre : ニュース, 社会

繰り返しメモ用紙になにかを書いて弁護人に渡す松永

 続いて佑介くん(緒方の甥)事件に移ると、松永はすっかり退屈している様子を顕わにし始める。指にボールペンを挟んだ右手で、頬杖をついていたかと思えば、手元のメモ用紙になにかを書いて、それを弁護人に手渡すと、弁護人の顔を覗き込む。

 佑介くん殺害時の状況について触れている最中も、松永は弁護人にメモを渡し、弁護人がメモを戻すと、松永はにっこりと笑って頷く。そしてしばらくすると、またもやなにかを書いて、弁護人にメモを渡す。こうしたやり取りが7~8回は続いた。

写真はイメージ ©️iStock.com

 

 それは花奈ちゃん(緒方の姪)事件についての朗読になってからも同じだった。松永はしきりと弁護人にメモを渡しており、私は「M、(判決文の内容が)違うという風にメモを書き弁護人へ」と書き取っている。

遺族席からはすすり泣きの声が漏れ…

 殺害された当時まだ10歳だった花奈ちゃんへの犯行内容は残酷で痛ましいものだ。その詳細が語られると、法廷内の遺族席からはすすり泣きの声が漏れ、ハンカチで顔を覆う遺族もいた。そんななか、松永の様子について私は「Mは顔を紅潮させ、メモを書き、弁護人へ渡す」と記していた。また緒方については、「正面を向いたまま、微動だにせず」とある。

「共謀のうえ、確定的な殺意を持って、殺人の共同正犯が成立する」

 判決文(要旨)は、花奈ちゃんの死因について、通電による電撃死、もしくは絞首による窒息死のいずれかということは特定できないが、殺人罪が成立するとの結論を出し、それから20分間の休憩に入った。

 再び開廷すると、今度は乙女(原武裕子さん)への詐欺・強盗、監禁致傷事件についての朗読が始まった。彼女についても松永と緒方の共同正犯であることが次々と認定されていく。松永は、足を開いて座り、時折頭を掻くなどしていたが、そのうち弁護人にメモを渡すようになり、私は「苦笑の弁護人」と記録している。

 そして最後の事件である甲女(広田清美さん)への監禁致傷事件についての朗読が始まった。ここでは、「Mはバインダーを広げ、せわしなく動く。Oは動かず前を見ている」とある。この事件も松永と緒方について、共同正犯であることが認定された。

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