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連載完全版ドキュメント・北九州監禁連続殺人事件

2022/02/01

genre : ニュース, 社会

それぞれの被害者について取り上げた判決文

 午後3時34分頃になると、ついに判決文は〈量刑の理由〉に至る。まずそこで取り上げられたのは〈本件各犯行の被害者ら〉について。以下、その一部を抜粋する。

●広田由紀夫さん

〈由紀夫は健康な肉体を持ち、不動産会社の営業係員として精勤し、内妻宅で平穏な家庭生活を営み、甲女もその生活に溶け込んでいたのに、偶々客として訪れた被告人両名と関係が生じたばかりに、境遇を一変させられ、内妻や甲女との仲も引き裂かれ、想像を絶する苦しみを受け続け、親やきょうだいに助けを求めることもできず、甲女を残したまま、34歳の若さで生命を奪われた〉

●緒方孝さん

〈孝は、若いころから真面目で良く働き、正義感が強く、周囲から頼りにされ、情に厚い性格であった。身内であっても、事件を犯した犯人は匿ったり逃走させたりすべきではなく、自首を勧めるのが本来取るべき道であることは、強い正義感の持ち主の孝には分かっていたはずであるが、娘や孫たちに対する愛情があり、松永の要求を毅然として拒否することはできなかった。(中略)松永の支配から脱却する糸口を見付けることができないまま、家族を後に残して空しく61歳で世を去らねばならなかった〉

●緒方和美さん

〈和美は、孝の妻として、勤務のある孝を助けて農作業に精を出し、緒方一家を支え続けてきた(中略)実姉と老後の夢などを語る余裕も生まれつつあったときに、松永に取り込まれ、支配下に置かれてしまった挙句、孝を奪われ、悪夢としかいいようのない体験をしたのに続いて、自らも無残に殺害され、58歳で人生を閉じなければならなかった〉

●緒方智恵子さん

〈智恵子は明るく快活な性格であったが、被告人両名によって平穏な家庭生活を破壊され、両親を殺害された上、夫を松永の言いなりにされ、花奈と佑介まで松永の支配下に置かれ、育ち盛りの2人の子を小学校等に行かせることもできず、絶望的な日々を送る中、事もあろうに夫と娘によって殺害され、33歳の若さで人生を閉じなければならなかった。後には母なくしては居られない2人の幼い姉弟が残された〉

●緒方隆也さん

〈隆也は、真面目で律儀な性格で、警察官であったが、実父が病気になると退職して実家に帰って来たほどで、優しく親思いであり、その人柄を買われて孝夫婦の養子に迎えられた。(中略)「片野マンション」で、松永の巧妙な工作に翻弄され、孝夫婦や智恵子との間に葛藤も生じたが、被告人両名の支配下に置かれ、通電等の暴行、虐待を受け続けながら、最後まで孝夫婦や智恵子と行動を共にし、これを見捨てることをしなかった。(中略)隆也は、激しい嘔吐を繰り返し、自力で起き上がることも、食べ物や水を摂取することもできないほど病状を悪化させていたにもかかわらず、医師による治療を受ける機会を与えられないまま、花奈と共に閉じ込められた「片野マンション」の浴室で、後に幼い2人の子を残し、38歳の若さで絶命した〉

 判決文はさらに、こうしたまわりの大人全員が命を奪われた後に取り残され、誰にも助けを求めることができなかった子供たちについても触れる。

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