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連載完全版ドキュメント・北九州監禁連続殺人事件

2022/02/01

genre : ニュース, 社会

原武裕子さんと広田清美さんについて取り上げた判決文

 続いて、詐欺・強盗、監禁致傷事件の乙女(原武裕子さん)と監禁致傷事件の甲女(広田清美さん)について。

●乙女

〈乙女事件の各犯行は、いずれも乙女の人格を無視し、これを踏みにじったものである。乙女は、肉体的、精神的苦痛に耐え切れず、また、生命の危険を感じ、隙を見て、監禁されていた2階のアパートから飛び降りて逃走した。その際重傷を負ったほか、監禁中に受けた暴行、虐待によって、重篤なPTSD(外傷後ストレス障害)等に罹患し、事件後7年以上が経過してもなお、しばしば被害体験の想起と共に強い恐怖心が再燃し、その都度激しい動悸、身体の硬直等の症状に苦しめられ、社会復帰もままならず、日常生活にさえ重大な支障を来している状態である〉

●甲女

〈甲女(当時10歳)は、実父由紀夫が、警察による指名手配を受け逃走生活を送っていた被告人両名の金づるとされ、由紀夫と共に被告人両名に取り込まれ、「片野マンション」において、被告人両名と約1年間にわたり同居させられた。その間通電等の暴行、虐待を受け続け、由紀夫は殺害されたが、甲女は、孤独な境遇になった後も、17歳になるまで約6年もの長期にわたり被告人両名の支配下に置かれ、通電等の暴行、虐待を受けつつ、「片野マンション」等で生活させられた。甲女が身体に負った傷害の点もさることながら、甲女の精神に容易に癒し難い深い傷跡を残した〉

小学生時代の松永太死刑囚(小学校卒業アルバムより)

「身体、精神に生き地獄のような苦痛と恐怖を与え続けた」

 判決文(要旨)は次に、〈本件各犯行の全体を通じ特に考慮すべき犯情〉について言及する。そこでは、〈被告人両名が被害者らを取り込んだ動機、目的は極めて自己中心的で、反社会的なものである〉ということが挙げられた。さらに〈長期にわたり被害者らに通電等の凄惨な暴行、虐待を加えたこと〉に触れ、〈被告人両名が被害者らを殺害したことの重大さもさることながら、それに至る過程において、被害者らの身体、精神に生き地獄のような苦痛と恐怖を与え続けたことも、被告人両名の量刑上極めて重要である〉と指摘した。

 また、〈被告人両名が被害者らを殺害した動機、目的は極めて自己中心的で、反社会的なものである〉とし、短期間のうちに合計7人を残酷な方法で連続的に殺害したことは、〈いずれも残酷で非道なものであり、血も涙も感じられない〉と断言する。

 判決文は松永と緒方が、〈被害者らの死体を全員解体し、徹底的に罪証を隠滅したこと〉について、〈殺人等の犯罪の態様として極めて残忍であると同時に、まさに完全犯罪を狙ったものであり、極めて卑劣かつ狡猾である〉と糾弾。本件各犯行で見逃せないもう一つの点として、〈そのすべてで児童が犯行の巻き添えや痛ましい犠牲になっていることである〉として、〈これらは、本件各犯行の残忍で冷酷な側面を如実に示している〉と付け加えた。

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