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「寝たきりの親にパラサイト」訪問診療医射殺事件にちらつく"8050問題"家庭の末路

source : 提携メディア

genre : ニュース, 経済, 社会

1月27日、渡辺宏容疑者(66歳)は埼玉県ふじみ野市の自宅で、前日に死亡した母親(92歳)の担当医だった鈴木純一さん(44歳)を人質に立てこもり、散弾銃で撃って殺害した疑いで逮捕された。医師の筒井冨美さんは「自らは働かず、寝たきりの親の年金収入を生活の糧とする家族の中には親に対して際限なく延命治療をリクエストするケースが少なくない。それは、愛する親を死なせたくないという気持ちゆえの“懇願”であることもあるが、“金目当て”と感じる医療者も多い」という――。

なぜ66歳の無職容疑者は献身的な訪問医を散弾銃で殺したのか

2022年1月27日夜、埼玉県ふじみ野市の住宅街で「猟銃を持った住民が医師を人質にとって立てこもっている」というショッキングなニュースが流れた。翌28日朝、住宅内に突入した警察が容疑者(66歳)の身柄を拘束したものの、医師は心肺停止の状態で発見され、病院に搬送されたが死亡が確認された。

送検のため埼玉県警東入間署を出る渡辺宏容疑者(左)=2022年1月29日午前、同県ふじみ野市(写真=時事通信フォト)

亡くなった医師は40代の働き盛りであり、医師会関係者の談話では在宅医療に真摯(しんし)に取り組んでいたそうで、市役所職員も「このような理不尽な形で亡くすのは地域としても大きな損失だ」と語った。「夜間に自宅療養中のコロナ患者を往診」「パラリンピックの聖火リレーランナーを伴走」など、ボランティア精神にあふれる献身的な医師だったことがしのばれるエピソードが次々と報道され、視聴者の涙をさそった。

医療者が犠牲となる事件は後を絶たない。

2021年12月には、大阪市の雑居ビルにある心療内科クリニックが患者に放火されて、医師を含む25人が犠牲になった放火殺人事件を彷彿させるような、やり切れない事件となった。

初めてではない訪問診療医の襲撃事件

近年報道された「患者および家族による医師襲撃事件」について表にまとめた。犯人は全員男性であり、40代以上の中高年が目立つ。

2014年には、「東京都内の大学病院に火炎瓶15本投下」という、運が悪ければ大阪府のクリニック放火事件を超えるレベルの死者が出かねない事件が発生している。場所は、東京都八王子市の東海大学医学部付属八王子病院。犯人は40代の元入院患者であり、入院中より職員に「シャワーの順番が遅かった」「もっと俺の待遇を良くしろ」と長時間にわたってクレームをつけるなど、今回の事件と重なるようなモンスターペイシェントぶりを発揮していた。スプリンクラーが作動してスムーズに鎮火したので死傷者が発生しなかったせいかニュースとしての扱いは小さく、さほど世論も動かなかったので、病院関係者が身を守るための積極的な予防策は生まれなかった。