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血で血を洗う内部抗争…三谷幸喜が「鎌倉殿の13人」で“理知的で冷静な悪党”中村獅童を推す理由

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source : 文藝春秋 2022年1月号

genre : エンタメ, 芸能

「文藝春秋」1月号より脚本家の三谷幸喜氏による「僕が好きな歴史の脇役『100人』 」を全文公開します。(全2回の1回目/後編に続く)

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僕にとってなじみの薄い鎌倉時代

 大河ドラマ「鎌倉殿の13人」(NHK)の脚本を折り返し地点までようやく書き上げたところです。本当にきつい題材を選んじゃったなと、たまに後悔しています。その分、楽しいですけど。

 今まで書いてきた歴史物と異なるのは、視聴者の皆さんにとっても僕にとってもなじみの薄い鎌倉時代を描くこと。源頼朝が平家を倒して鎌倉幕府をつくったことはよく知られていますが、では頼朝が打倒平家のために初めて挙兵した時の人数は? というと、ご存知ない方がほとんどではないでしょうか。

主人公の北条義時を演じる小栗旬 ©getty

 平家との最初の戦いは1180年。東国の武士から頼朝は味方を募るも、多くが様子見でなかなか集まらない。流罪人の頼朝には自前の家臣がほとんどおらず、結局、頼朝軍は赤穂浪士よりも少ない人数で挙兵しているんです。そこから平氏を倒し、鎌倉幕府を開くのは大仕事だったろうなと、脚本を書きながら感じています。

 鎌倉時代は、血で血を洗う、御家人間の内部抗争が多発していたのですが、当時の日本人は首を刎ねることにためらいがないように思える。「なんで、この場面で、この人が死んじゃうんだ!」と思うような話がたくさんあります。市川染五郎さんが演じる、木曽義高(源頼朝の娘の若きフィアンセ)をめぐる話も可哀想で……。どれくらい可哀想かはここでは言わないので、ぜひドラマを観て下さい。

 とはいえ、ちょっと現代人の僕には想像のつかないようなドラマティックな出来事が次々と起こるのは興味深くもあり、書きがいがあります。悲劇をどう明るく前向きに描いていくのかが僕の使命。1年間、日曜の夜に家族みんなで楽しんでもらえるような作品にしたいです。

NHKより

 2022年1月9日放送開始のNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」は三谷幸喜氏にとって3作目の大河ドラマとなる。「新選組!」(2004年)では、幕末を生きた新選組局長・近藤勇、土方歳三や沖田総司らの青春群像劇を描き、「真田丸」(2016年)では、戦国時代最後の名将・真田信繁(幸村)の生涯を描いた。

 今作の舞台は平安時代後期から鎌倉時代初期。主人公の北条義時は、第2代執権として鎌倉幕府の礎をつくった人物である。鎌倉殿、すなわち将軍の源頼朝が亡くなると、源頼家が後を継ぎ、有力御家人13人が頼家を支える合議制ができる。義時は、その13人の家臣の1人で、熾烈な権力闘争で家臣が脱落していくなか、最後まで勝ち残っていく。

映画「ゴッドファーザー」の設定に似ている

 北条義時は、一言で言えば、とにかくダークな男です。

 父・北条時政は、田舎のいち豪族にすぎませんでした。それが頼朝に仕えて平氏討伐に加わり、ほぼ一代で幕府を牛耳るまでに成り上がった。

 時政には宗時という有能な長男がいて、本来、彼が跡取りになるはずでしたが、平家との戦いで、宗時が戦死してしまう。それによって、北条家の中心になるはずではなかった、次男の義時が、歴史の表舞台に登場するわけです。

 これ、映画「ゴッドファーザー」の設定に似ているんですよ。義時を、アル・パチーノが演じるマイケル・コルレオーネに置き換えてみてください。