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三谷幸喜が「鎌倉殿の13人」で描く女性「新垣結衣演じる八重は前半の最重要人物、小池栄子の政子に共感できるよう…」

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source : 文藝春秋 2022年1月号

genre : エンタメ, 芸能

「文藝春秋」1月号より脚本家の三谷幸喜氏による「僕が好きな歴史の脇役『100人』 」を全文公開します。(全2回の2回目/前編から続く)

NHKより

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なぜ僕は歴史が好きなのか

 そもそも、なぜ、僕は歴史が好きなのか。それは高校の歴史の先生と大河ドラマのおかげです。

 歴史研究家である野呂肖生先生は山川出版社からも日本史の著作を出しています。野呂先生の教えは「歴史は因果だ」。「物事には必ず原因と結果がある。歴史はその繰り返しである」との考えで、理数科に通い理詰めを好む僕は目から鱗でした。年号の丸暗記ではなく、歴史を流れでとらえる大切さ、面白さを学びました。

 だから、戦のアクションシーンでは、「義経の大勝利で終わった」というナレーションのみで済ませることはしない。なぜ勝ったかをきちんと描く。「真田丸」でも、大坂夏の陣を描いた時に、なぜ、最初、優勢だった真田信繁ら豊臣側が負けたのか、その理由にこだわりました。史実では諸説ありますが、豊臣軍の大野治長のミスで、味方の優勢・劣勢を判断するための豊臣家の馬印を、戦場から持ち帰っちゃって味方が後退のサインだと勘違い。そのミスを発端に戦況が大きく変わったという説をドラマでは採り入れました。そうやって歴史が動く瞬間をきちんと描くようにしたんです。

三谷幸喜氏 ©文藝春秋

 今作も、源義経が平家と戦う、一ノ谷の合戦も壇ノ浦の合戦も、なぜ、源氏が勝ったのかという部分を史実に沿った上で、僕なりの解釈を加えてお見せするつもりです。

 高校時代から歴史の教科書に出てくる人物に興味を持てなかった僕は授業中、歴史上の人物の似顔絵書きに精を出していました。

〈龍之介が「わがヒーロー」と呼んだ男 作品『恩讐の彼方に』『藤十郎の恋』〉

「文藝春秋」を創刊した菊池寛の似顔絵を高校生の時に書いて、その下にこの説明文を付けてコピーし、同級生に配りました。ちなみに、菊池寛のいた新思潮派の文学者をまとめて描いたので、芥川龍之介、山本有三の似顔絵が菊池寛と並んでいます。似顔絵を描くのが趣味だったのですが、そんなものをいきなり貰って、同級生も混乱したと思います。

 当時、雑誌「別冊太陽」のムックとして、歴史上の人物の肖像が載った「戦国百人」、「明治維新百人」が出版され、シリーズ3作目が「近代文学百人」でした。授業そっちのけで、そこに載っている肖像写真をもとに菊池寛などの文士や歴代総理大臣の似顔絵を描いてました。

 どの本もいまだに僕の本棚にあります。歴史上の人物の顔が好きなんですね。いちばんのお気に入りはやはり丹羽長秀。戦国武将っぽくない穏やかな顔つきが昔から大好きだった。「清須会議」で長秀役を演じた小日向文世さんには、この肖像画に寄せたメイクをしてもらいました。