1回治しても、また同じ患者さんがむし歯になってやってくる。これはどうしてなんだろうと。
【患者】どうしてなんですか?
【歯科医】痛みを失くすとか、むし歯の部分を削って詰めるという対症療法では、根本治療にはならないんです。丁寧に一生懸命治療しても治らない。むし歯が治った患者さんが、今度は歯周病になってやってくる。
無力感におそわれましたし、さすがに「これはおかしいな」と思うわけです。
【患者】しかも、歯だけでなく、全身の健康も損なう……。
【歯科医】実は、日本では歯が20本以上残っている人といない人では、年間にかかる医療費に10万円以上の差が出るというデータもあります。アメリカでも、1年間で3回以上歯科に来院があった人、ようするに歯科で定期健診などを行っている人とそうでない人では、医療費が倍ぐらい違うというデータもある。
お金をかけなくても歯を大切にすることはできる
【患者】ということは、歯の治療は投資だと思ってしっかりお金をかければ、結局、医療費が浮くということですかね?
【歯科医】違います! 歯にお金をかけるんじゃなくて、歯を大事にしましょうという話をしているんです。お金をかければ歯がよくなるという考え方も間違い。そもそも、日頃のケアをきちっとしていれば、お金をかける必要はなくなります。そこにお金はかかりませんよね。
【患者】そうですね。失礼しました……。
【歯科医】やはりきちっと予防をしていかないと意味がないということ。これまで60年持たせればよかった歯は、寿命が延びたことによって、そこから20年、30年、40年と使い続けなければならなくなっています。
だから、歯に対する価値観を昔と変えなければいけない。治療をするなら最善の治療を選び、予防を怠らないようにしましょう。そうやって歯を大切にすれば、天然の歯だったら100年でも持つ可能性がありますよ。
サウラデンタルクリニック院長(旧堀歯科診療所院長)
1959年生まれ。日本大学松戸歯学部卒業。昭和大学歯学部付属歯科病院口腔外科勤務の後、日本橋中央歯科診療所などを経て、1990年に東中野にて堀歯科診療所を開設。歯学部卒業後も診療の傍ら、スウェーデン・イエテボリ大学で実践されている歯周病治療など、海外の最新治療を学び、治療に取り入れている。
