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連載完全版ドキュメント・北九州監禁連続殺人事件

2022/02/15

genre : ニュース, 社会

松永の主張に次々下される「事実誤認は認められない」という評価

●広田由紀夫さん事件について

 

〈鑑定結果は記録から認定できる事実に矛盾するところはなく、十分説得力を持つものであり、疑問を挟む余地はない。(中略)

 

(由紀夫に対する暴行、虐待の継続と由紀夫の状態に対する松永の認識状況)を総合すれば、少なくとも松永において未必的な殺意があったことは優に認められる。(中略)

 

 松永が、倒れた由紀夫に対して、救命措置を講じた一事をもって、以上の認定を左右することはできない。したがって、原判決に所論(松永弁護団の主張)の事実誤認は認められない〉 

写真はイメージ ©️iStock.com

●緒方和美さん事件について

 

〈松永が和美殺害について、緒方、隆也(緒方の妹の夫)、智恵子(緒方の妹)に指示したことは、信用性のある緒方の供述によって認定できる。これは原判決が事実認定の補足説明で詳細に認定、説示するところでもある。(中略)松永が和美殺害を決意していたことは明らかである。原判決に所論の事実誤認は認められない〉

不明瞭な点があっても「明らかな事実誤認とまでは解されない」

●緒方佑介くん(緒方の甥)事件について

 

〈確かに、所論が指摘するように、緒方の供述(台所で、花奈〔緒方の姪〕と緒方がコードで首を絞めた。)とでは、本件犯行場所と具体的な態様について食い違いがある。(中略)

 

 ところで、本件佑介事件及び花奈事件は、甲女(広田清美さん)自らが殺害行為に関わっている疑いがある点で、他の事件とは異なっている。そして、甲女は、いずれも、佑介と花奈が死んだような状態の時に、松永に命じられて関与させられたと述べている点でも共通しているが、佑介事件においては、甲女が関わった時点では、佑介も浴室に横たわっていたというのであり、首を絞めた際も佑介は身動きをしなかったと述べており、その時点で佑介は、死んでいた可能性が高いことになり、この点でいささか不自然さが残る。考えられることは、甲女は自分の関わった事件については、できるだけ自分の責任を軽いものにしようとして事実を曲げているのではないかということである。(中略)そうすると、甲女の両事件への関わりについては、間違いないとしても、具体的状況が、その述べる通りであると断定するには躊躇が感じられる。これに対して、緒方は、自らが関わって佑介及び花奈を殺害したことを一貫してかつ具体的に述べており、上記のように、緒方が幼い子供達に手を下して殺害する独自の動機があったとは考えにくいのであって、上記のような問題点のある甲女の供述よりは自然で信用性が高い。しかし、これにも裏付け証拠がないので、緒方の供述のみに基づいて事実認定をすることもできない。

 

 そうすると、松永の命令の下に、緒方と花奈と甲女とが関わり、コードかひもを用いて佑介の首を絞めて殺害したことは認められるが、犯行場所や犯行態様については、上記のような供述の対立があり、甲女の供述を取るべきか緒方の供述を取るべきかはにわかに断定できず、結局択一的な認定をせざるを得ない。その意味で、甲女の供述に依拠して事実認定をしている原判決には誤りがあるが、これが判決に影響を及ぼすことが明らかな事実誤認とまでは解されない〉

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