松永が主犯で殺害したことに変わりはない
●緒方花奈ちゃん事件について
〈花奈の絞頸に先立ち、簀の子に縛り付けた花奈に通電したか(*甲女証言)否か(*緒方証言)、「片野マンション」(仮名)において、松永が花奈の首を絞めるよう緒方らに対して指示したか(緒方)否か(甲女)及び絞頸に用い道具は電気コードか(緒方)、ひも状のものか(甲女)等につき、緒方の供述と甲女の供述には食い違いがある(中略)
結局、緒方及び甲女の各供述の前記各相違点について、いずれの供述が信用できるのかについては、断定することができない。
しかしながら、いずれにせよ、花奈の死亡の事実は明らかであって、その死因は、松永と緒方が花奈に通電したことによる電撃死か、それとも、松永の命令により、緒方と甲女が花奈の首を絞めたことによる窒息死のいずれかであって、緒方一家事件の流れからみて、松永が主犯となって、緒方とともに花奈を殺害したことに変わりはない。したがって、原判決に所論の事実誤認は認められない〉
松永弁護人らが主張する「事実誤認」はいずれも採用できず
判決文は、松永側の主張に対して、このように締めくくる。
〈以上のとおりであって、原判決認定の各犯罪事実について事実誤認をいう松永弁護人らの主張は、いずれも採用できず、論旨は理由がない〉
このとき法廷にいた私の取材ノートには、次のように記されていた。
「M(松永)裁判長による理由朗読の間、しきりと顔を上下させ、手元のノートに何事かを書き込んでいく。O(緒方)ずっと正面を向き、微動だにしない」
続いて緒方側の主張についての、判断が下されることになる。(第92回に続く)
