昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

「お前ら罰金だからな」入団時角刈りパンチパーマで“田舎のヤンキー”だった新庄剛志が2200万円稼いだ分だけ使うまで

#1

「文藝春秋」3月号より、野球解説者の亀山つとむ氏による「ボクだけが知る新庄剛志」を全文公開します。(全2回の1回目/後編に続く)

◆ ◆ ◆

あの日がビッグボスへの第一歩

 いま振り返ると、あの日がBIGBOSSへの“第一歩”だったのかもしれません。

 2021年2月12日、沖縄・宜野座村野球場。解説者としての仕事で、僕は阪神タイガースの春季キャンプの視察をしていました。バックネット裏のスタンド席から練習を観ていると、いつにも増して報道陣の数が多い。それを見て、数日前、アイツが宜野座にやって来るのではと噂になっていたのを思い出しました。

 黒のスリーピースのスーツに襟を立てた青いシャツという出で立ちで登場すると、

「あっ亀山さん、どうも」

 まるで昨日も会ったように挨拶してくると、そのまま隣に腰かけてきました。

 新庄剛志と会うのは実に5年ぶりでした。スポーツニュース番組の企画で人生初のキャンプリポートに挑戦するというのですが、最近のプロ野球事情を全く知らないようでした。

新ユニフォーム姿の新庄監督 ©共同通信社

「足速い、あの選手。いつか盗塁王を獲れるんじゃないですか」

――2年連続盗塁王の近本(光司)だよ。

「彼のバッティング、いいですね」

――大山(悠輔)は4番を打っていたから……。

 選手を見る目は確かということなのでしょう(笑)。彼らしいと思ったのは「外野手のフィールディング(守備動作)が甘い」とすぐに気が付いたことでした。

 前年の2020年(昨シーズンも)まで、阪神は3年連続失策数ワースト1位でした。新庄は、外野手の構え方について「投手が投げてから打者が打つまで、膝に手をつくのは良くない」と。一歩目が出遅れ、捕球の確率が下がるというのです。たしかに現役時代の彼は、投手が投げる直前に足を動かし、外野を抜けそうな飛球に追いついていました。

 このキャンプ視察の頃には、監督になりたいと考え始めていたのかもしれません。一緒に練習を視察して、これからプロ野球をじっくり勉強していこうと考えているのが伝わってきました。ただ、それでも1年後にユニフォームを着ているとは思ってもみませんでした。