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Aの弁護士が採った「黙秘作戦」

「逮捕直後は取り調べに素直に応じ、『医者になるため東大を目指して勉強していたが成績が上がらず、人を殺して死のうと思った』などと事件解明に繋がる供述を次々していました。ところが、逮捕後に弁護士が接見に入った途端、口を噤むようになった。『家族には会いたくない』と話したり、雑談には応じるものの、動機については黙秘したままなのです」(同前)

 Aについた弁護士は都内の弁護士事務所所属。司法関係者は「刑事事件を数多くこなしてきた中堅弁護士が代表を務め、いわば『権力と闘う傾向が強い』事務所です」と明かす。

東大前駅の構内では放火を試みた ©鈴木七絵/文藝春秋

 最近は一般の事件でも、黙秘を貫く容疑者が増えてきている。日本弁護士連合会も容疑者の弁護活動強化のために「黙秘権、取調拒否権等を徹底的に活用」するよう提言しているほどで、Aの弁護士が採った「黙秘作戦」もそうした方針に沿ったものと見られる。

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 だが、捜査関係者は黙秘には首を傾げる。

「無罪主張ならともかく、本人が凶行に及んだのは明らか。逮捕直後のように受験に悩んだなどの動機を話すことは、むしろ罪を減じる事情として考慮され、本人にもプラスのはずなのだが……」

 17歳が抱えた心の問題は、今も解けないままだ。