精子提供は特定の医療機関でも行っているが、順番待ちに時間がかかることや、ドナーの身元を確認できないことが多いこと、また提供を受けるための条件が厳しいことなどから、現在はまだハードルが高い。それと比べると、SNSを通した個人間の精子提供は、リスクは大きいが取り組みやすいと考える人も多いだろう。
A子さんは、どうしても第二子を諦めきれなかった。そこで「条件に合ったドナーに出会えた場合のみ提供を受けよう」と決心。
A子さんが決めた条件とは大まかに以下のようなものだった。
(1)夫(東大卒)と同等の学歴であること
(2)配偶者などがいないこと
(3)日本人であること
(1)の条件は学歴重視で批判も浴びそうだが、第一子と生まれてくる子の差を限りなく小さくする目的だったという。
(2)は既婚者や恋人がいると、その女性とのトラブルなども考えられることから独身を希望したという。
(3)についても第一子との大きな差をなくすことが目的だった。そして、将来の高度医療の可能性を考慮していたという。
「3つの条件」に合致したB氏にDMを送り…
この高度医療とは胎盤の中に含まれる臍帯血を利用した再生医療だ。臍帯血には血液、臓器、筋骨、神経のもととなる幹細胞が含まれているため、白血病などの血液の病気や遺伝による疾患などを治療するのに骨髄移植より効果があるものとして期待されている。
出産時にしか保存できないもので、A子さんは第一子の出産時にも保存しているという。もし家族に病気が発覚した際、型が合えば本人ではなくとも臍帯血を利用することができる。医学的には不明だが、A子さんは「日本人同士であるほうがこの臍帯血の型に合いやすい」と考えていたため、精子ドナーには日本国籍であることを求めていたようだ。
A子さんは出産について先々のことまで考え、真剣に取り組んでいたことがうかがわれる。
そしてA子さんは3月中旬から条件に合致する精子ドナー候補者を探し始めた。計15人と精子ドナーの候補者を探すためにDMで連絡するなどした。今回訴えたB氏はその中の1人だった。
3月17日、A子さんはB氏のツイッターアカウント「精子提供@東京」を見つけた。プロフィール欄やツイートには、“アピールポイント”が記されていた。20代で都内在住の国立大卒。中高時代はバスケットボール部に所属しており、身長や血液型なども明かされていた。国内最大手金融機関に勤務し社員証を見せることも可能で、精子の質に問題もない。花粉症などのアレルギーは一切なく、アルコールにも強く、大きな病気にかかったことはない。
この条件に可能性を感じたA子さんはB氏にDMを送り、学歴と配偶者の有無について改めて確認した。