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《精子提供訴訟の真実》「断ったのにマンガ喫茶で性交を提案」「攻撃的な態度で『お前』呼ばわり」原告女性が負っていた“精神的な傷”

《精子提供訴訟の真実》「断ったのにマンガ喫茶で性交を提案」「攻撃的な態度で『お前』呼ばわり」原告女性が負っていた“精神的な傷”

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複数の社員に確認したところB氏の“正体”が発覚

 そして事態は急転直下で動き出す。B氏への不信感が高まったA子さんは「京大経済学部卒の日本生命総合職社員」という肩書にも疑問を抱き始めたのだ。そしてB氏が以前住んでいると言っていた日本生命の独身寮(江戸川区)へ行き、寮母の女性に「静岡県三島市出身の独身で京大経済学部卒の下の名前が『リョウ』という丸の内の日本生命で働いている総合職の男性社員はいませんか」と聞き、LINEのプロフィール写真を見せた。

 女性が寮にいた複数の社員に確認したところ、ここでB氏の“正体”が発覚したのだ。

 B氏は日本生命の浦安の家族用社宅に住んでいる中国籍の既婚者。静岡大出身で、B氏が名乗っていた「リョウ」は中国語で書くB氏の名字だった。

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B氏が住んでいた日本生命の家族用社宅 ©文藝春秋

 A子さんは愕然とした。子どもを熱望する気持ちに付け込まれたのだと思い至ったのだ。この事実に気がついたときには、A子さんは中絶が可能な妊娠21週目を過ぎており、もはや産む選択肢しかなかった。

 この後、A子さんはB氏のFacebookを探し当て、嘘をついていたことを再確認。2019年12月2日、勤務先の日本生命に電話した。電話に出たB氏は既婚者であることや中国籍であることは認めたものの、「日本人だと偽っていない」などと反論し、学歴については話をはぐらかした。そしてなぜか、これまで流暢な日本語を操っていたのにもかかわらず、中国語なまりの片言の日本語で話し始めたという。

 法的手段しかないと考えたA子さんはB氏に対し、事実を聞き出すために気のあるようなメッセージを送信し、電話や対面でやり取りを続けた。そして、B氏はA子さんの前で嘘をついていたことをすべて認めたという。

騙したことを認めたが、養育費は一度も支払わず

 2020年、A子さんはB氏との子供である第二子を出産した。あれほど望んでいた第二子は、B氏に蹂躙された記憶を蘇らせるトリガーとなってしまい、一緒に暮らすことはもはやできなかった。

 A子さんを騙したことを認めたB氏は、養育費として年に2回、各24万円を支払う約束をしたが、一度も支払っていないという。

 A子さんは現在も精神的に不安定な状態が続いている。「文春オンライン取材班は、代理人弁護士を通してA子さんに直接の取材を試みたが「取材に応じる意思がないわけではないが、体調が悪いため、対応する場合にはこちらからご連絡させていただきます」と回答した。

精子提供を行っているTwitterアカウント

 SNS上には、現在も多くの「精子提供アカウント」が存在する。カップルの問題や、性的志向によって不妊に悩む人々が、ここに光明を見出してしまうこともあるだろう。しかし、アカウントの真偽の判別は極めて難しい。今回のケースのように、SNSを通した精子提供はさまざまな問題を孕んでいるのだ。

その他の写真はこちらよりぜひご覧ください。

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