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連載完全版ドキュメント・北九州監禁連続殺人事件

拘置所にいる松永太に手紙を出し、私は「凶悪犯」と面会室で対面した

完全版ドキュメント・北九州監禁連続殺人事件 #93

2022/03/01

genre : ニュース, 社会

 起訴された案件だけで7人が死亡している「北九州監禁連続殺人事件」。

 もっとも凶悪な事件はなぜ起きたのか。新証言、新資料も含めて、発生当時から取材してきたノンフィクションライターが大きな“謎”を描く(連載第93回)。

北九州監禁連続殺人事件をめぐる人物相関図

福岡拘置所にいる松永へ向けての手紙を出した

 松永太には一審判決通り死刑、緒方純子には一審判決を破棄して無期懲役――。

 2007年9月26日に福岡高裁で上記の判決が下されると、松永は不当判決だとして、10月5日付で最高裁へ上告した。また、緒方が上告することはなかったが、福岡高検は最高検と協議したうえで、緒方の判決について「最高裁の死刑に関する判例に違反する」として、10月9日付で最高裁へ上告した。

 なぜ自分がその時期に行動したのかは記憶がはっきりしないのだが、私は世間がこの事件について関心を失っている08年10月末頃に、福岡拘置所にいる松永へ向けて手紙を出した。想像するに、取材に力を注いでいたメディアの熱も冷めたことで、彼もそろそろ人恋しくなっているだろう、などと軽く考えたのだと思う。

 そこで私が綴ったのは、事件からこれだけの時間が経ったいまだからこそ、“松永さん”も世間に訴えたいことがあるのではないか、といった内容だった。そのうえで、福岡拘置所に面会に行くので、一度私と会って判断していただき、もし信用できると感じたら、話を聞かせてもらえないかということだった。

小学生時代の松永太死刑囚(小学校卒業アルバムより)

こちらの目を見つめながら、大きな声で切り出す

 福岡拘置所の待合室では、自分の持った番号札の番号が呼び出されるかどうかやきもきした。もし松永に面会の意思がない場合は、受付窓口に呼ばれ、「会わないそうです」と告げられて終わりとなる。

 だが、やがて館内放送で私の札番号が呼ばれ、面会室の番号がそれに続いた。私は目の前をアクリル板で仕切られた面会室に入ると、立ったまま松永を待つ。

 前方の扉が開くと、上下グレーのスウェットスーツ姿の松永が、分厚い書類の束を抱えて満面の笑顔で現れ、「こんにちは」と言うと、目の前の椅子に腰かけた。

「いやーっ、先生、わざわざ私のために東京から来ていただき、ありがとうございます。先生、いま私を取り巻く状況は、本当にひどい話ばかりなんですよ。とにかく聞いてください……」

 色白の歌舞伎役者のように整った顔立ち。直毛の髪の毛をきれいに切り揃えた松永は、こちらの目を見つめながら、大きな声で切り出すと、一気に話し始めた。