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「応援してもらうのが苦しい」カーリング・本橋麻里の五輪後に一変した私生活と“ロコ・ソラーレ”での再出発

source : 文藝春秋 2011年1月号

genre : エンタメ, スポーツ

 女子カーリング「チーム青森」の一員としてはじめて親元を離れ、トリノ五輪(2006年)、バンクーバー五輪(2010年)に出場した本橋麻里さん(35)。2010年には、生まれ育った北海道北見市で新チーム「ロコ・ソラーレ」を結成し、2018年の平昌五輪では、日本カーリング史上初のメダルを獲得。現在は一般社団法人ロコ・ソラーレの代表理事を務め、セカンドチーム「ロコ・ステラ」の選手としても活動しています。本橋さんが家族への感謝の思いを明かしたエッセイを特別に公開します。(「文藝春秋」2011年1月号より)

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私にとっての「平凡な中の幸せ」

「平凡な中の幸せを見つけなさい。そこに本当の幸せが隠れているから」

 母がよく口にしていた言葉です。日頃から、母は「幸せ」について話してくれました。「子どもたちが元気でいてくれることが私の幸せなの」とも。

 私が母の言葉の意味を痛いほど理解できたのは、今から6年前、初めて親元を離れて、カーリングチームの「チーム青森」に加入した時期でした。

本橋麻里さん ©佐藤亘/文藝春秋

 当時、高校を卒業して間もない私にとっては、見るものすべてが光り輝き、体験することすべてが新鮮でした。それと同時に、炊事洗濯を含めて身の回りのことを自分一人で行わなければいけない生活でもありました。

©佐藤亘/文藝春秋

 私にとって「平凡な中の幸せ」って、どんなことなのだろう。改めて考えてみると、当たり前のようにカーリングができる環境なのだと思います。地元でプレイしていたときも、青森でオリンピックを目指してひたすら練習に励んでいたときも、家族やまわりの方から支えられながらカーリングを続けることができました。それに気付かせてくれたのが、母の言葉であり、青森での日々でした。