「衛生兵」志願者の40%は女性
――「ホスピタリアーズ」のメンバーにはどんな人が多いのですか?
皆、様々なバックグラウンドを持ち、職業もバラバラです。特筆すべきは、志願して入った人の40%が女性だということ。戦地において女性は男性に比べてハンデがあるなんてことは全くありません。「ホスピタリアーズ」の創設者は車いすに乗った女性です。多くの人はクリミア併合の際に戦地に行った経験を持っています。一方で、私のように実際に戦地で活動するのが初めての人もいます。
――医療物資や食料は足りていますか?
「ホスピタリアーズ」では物資が足りている状態ですが、軍の最前線では足りていないと聞いています。現在、街中の薬局は閉まっており、薬類の入手が難しい。我々は調達のサポートをしています。糖尿病などの特殊な薬は特に入手するのが困難です。地下のシェルターに避難している人々の場合、水や食料、衛生用品も足りていません。
――戦闘によって負傷した人の処置をしましたか?
キエフの市街地はまだ激しい戦闘が起きているわけではないので、負傷者はあまりいません。戦闘が激しいのは北西部で、そこで活動する仲間たちは、ミサイルが撃ち込まれた高層マンションへ怪我人の手当てに向かったそうです。私がいる地域でも同じことが起きたらすぐに向かえるための準備を日々行っています。救命の訓練はもちろん、拳銃を使う訓練もしています。我々は戦闘するための人員ではありませんが、常に緊張感のある危険な環境で活動しなければいけません。それゆえ、日常的に武器を使う練習も行っているのです。
キエフは激しい戦闘こそまだ起きていませんが、静穏からは程遠い状態です。ウクライナの対空兵器がミサイルや航空機を撃墜する音が頻繁に聞こえてきます。攻撃対象が軍事施設だけでなく住宅などにも拡大されたことで、安全な場所というものが消えました。それでも慣れというものは怖いもので、いつのまにか夜は眠れるようになりました。
――自国が破壊されていく光景を目にして率直にどのような感情を抱きますか?
今、ウクライナで起きていることを世界中の人が直視するべきだと思っています。ロシアからの侵攻は、これが1回目でも2回目でもなく500年以上にわたって繰り返し行われている。ロシアはソ連時代からウクライナ人とロシア人は同じだと言っていますが、全然違います。中国人と日本人が同じだと言われたらそれは違いますよね? 言語も文化も違うんです。今回の侵攻をクリミア併合からの流れと見るのではなく、もっと大きな時間軸の中で起きていることだと理解しなければいけません。
実は、私にはロシアのルーツがあります。祖母がロシア人でシベリアに住んでいるのです。ロシア人の友達もたくさんいます。ですが、今ロシアの国旗を見ると厳しい感情を持たざるを得ません。民間人が住む地域を意図的に攻撃することはどんな理由があっても許せません。彼らに同情する余地は全くありません。