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裁判長自らも待っている、と呼びかけた栗原さんの言葉は話題になりました。

また、栗原裁判長は、被害者遺族として検察側の証人に立った少年の母の姉に対して、「決してあなたを非難しているわけではないが、周囲にこれだけ大人がそろっていて、誰か少年を助けられなかったのか」と問いかけたそうです。

法廷で裁判官が、自らの思い、感情をどこまで投げかけていいのか、賛否があるかもしれません。でも、栗原さんは、少年のことを自分の頭と自分の心で自考し、判決を本気で出そうとしたのではないでしょうか。少年を殺人犯に追いやった背景に、「社会」の責任もあるとすれば、栗原さんはその「社会」の中に自らをも含めて考えたのかもしれません。

さいたま地裁で裁判員裁判を担当していた栗原さんは、ある裁判員の言葉に影響を受けました。朝日新聞によれば、ある事件の協議中、栗原さんは裁判員から次のように指摘されました。「裁判官って、被告を呼び捨てにするんですね。普通、社会でそんなことってないですよね」。それまで栗原さんの目には「被告は裁かれる対象にすぎない異分子」と映っていたそうです。しかし、その裁判員は、被告を同じ社会にいる構成員、いわば“仲間”と捉えていました。

栗原さんは、それから、被告に「さん」を付けて呼び、丁寧語で語りかけるようになったそうです。やり方を変えたのです。上から見下されるのではなく、「さん」付けで呼ばれ、丁寧な言葉で語りかけられた被告は、何を感じるのでしょうか。

同じ目線に立とうとする裁判官の言葉は、被告の心に響くのかもしれません。

岡田 豊(おかだ・ゆたか)
ジャーナリスト
1964年、群馬県生まれ。日本経済新聞、共同通信記者を経て2000年からテレビ朝日記者。元テレビ朝日アメリカ総局長。トランプ氏が勝利した2016年の米大統領選挙や激変するアメリカを取材。共著に『自立のスタイルブック「豊かさ創成記45人の物語」』(共同通信社)などがある。

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