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《日本は「盾」、米国は「矛」という時代は終わった》自衛隊元最高幹部が問う「専守防衛」の見直し

2022/03/19

冷戦時代の思考では国は守れない。元統合幕僚長・折木良一氏による「『専守防衛』『非核三原則』を議論せよ」を一部公開します。(「文藝春秋」2022年4月号より)

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 昨年11月27日、「新たな『国家安全保障戦略』に求められるもの~激動する国際情勢に立ち向かうために~」と題した政策提言をまとめた。議論を始めたのは昨年2月。陸海空自衛隊の将官と防衛事務次官を務めたOB8人が東京・市ケ谷のビルに集まり、1回約2時間、計20回の議論を重ねた。政府の国家安全保障局や防衛省には、重要な点を説明したうえで提出した。

 なぜ、この提言をまとめたのか。それは、私たち8人が現在の国家安全保障戦略は日本を取り巻く環境に十分対応できていないのではないかという危機感を共有していたからだ。現在の戦略が発表されたのは、私が退官した直後の2013年末であり、すでに10年近く前になる。当時と比べ、中国や北朝鮮の脅威は格段に深刻さを増した。安全保障の舞台は従来の陸海空から、宇宙やサイバー、電磁波などの「新領域」に広がり、経済や科学技術との関係も無視できなくなっている。

元統合幕僚長の折木良一氏

中国と北朝鮮の脅威は今そこにある

 幸い、岸田文雄首相は今年末までに、国家安全保障戦略と防衛計画の大綱、中期防衛力整備計画の防衛3文書を改定すると語っている。私も2月初め、政府による改定作業のための意見聴取に参加した。

 日本の平和は戦後長く続いている。もちろん、私たちもあくまでも日本の平和、アジア太平洋地域の平和が末永く保たれることを願っている。一方で、アメリカは世界を圧倒する軍事大国ではなく、中国は十分対抗できる勢力となりつつあり、北朝鮮の核ミサイルはグアム島を射程圏内に入れるまで能力を向上させた。世界情勢は、この10年で大きく変わったのだ。今、ウクライナでは国際秩序を無視したロシアによる現状変更が行われ、国際社会は揺れている。

 民主主義社会においては、安全保障戦略もまた国民の総意に基づくものであることが理想だ。反対の意見はもちろんあるだろう。しかし、従来通りの安全保障観に閉じこもっていては日本の将来に禍根を残す。1人でも多くの人々に関心を持ち議論に加わって欲しいとの思いからこの提言をまとめた。今後、これを読んだ方々から様々な意見が生まれてくれれば、これほどうれしいことはない。

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