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《首都圏は砂上の楼閣》都心西部、横浜市直下…首都直下地震、想定される震源域は19ヶ所

専門家による最新研究 #1

被害は東日本大震災の10倍! 首都直下地震、富士山噴火にも備えよ。鎌田浩毅氏(京都大学名誉教授)、長尾年恭氏(東海大学客員教授)、中島淳一氏(東京工業大学教授)ら専門家による最新研究について議論した座談会「南海トラフ地震はいつ起こるか?」を全文転載します。(全2回の1回目/#2に続く 「文藝春秋」2022年4月号より)

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「地震の巣」と言われている場所がある

鎌田 最近、首都圏で大きな地震が立て続けに起きているので、不安に感じておられる方も多いでしょう。昨年10月7日に千葉県北西部を震源とするマグニチュード5.9の強い地震が起きて、東京や埼玉の一部で震度5強を観測しました。東京23区内でこのレベルの揺れが観測されたのは、11年前の東日本大震災以来のことです。

中島 あくまで体感的なものですが、ここ数年、ちょっと多いなという印象が私にもあります。ただ、この10月7日の地震は「地震の巣」と言われている場所なので、異常な現象だと心配する必要はありません。

長尾 2005年にも、ほぼ同じ深さ、場所、規模の地震が起きています。

中島 そうですね。関東地方にはいくつも地震の巣があり、そこで多くの地震が発生しています。

長尾 私が気になるのは、これまで比較的、地震が無かった場所で、また発生するようになったことです。昨年12月3日に山梨県東部で、ひさしぶりにマグニチュード5クラスの地震が起きました。この地域は3・11以降、なりをひそめていたのですが、また増えてきました。

東日本大震災は戦後日本にかつてない傷跡を残した ©文藝春秋

鎌田 私は3・11を境に、地震や噴火が続く「大地変動の時代」へ日本は千年ぶりに突入したと考えています。私たちの命を脅かす大災害がいつ起こっても不思議ではない。そこで大事になるのが科学的に正確な知識です。

長尾 同感です。私は長年、科学にもとづく地震予知に取り組んできましたが、予知の世界はアマチュアのマユツバ情報が多い(笑)。災害情報のリテラシー(理解力)がないとデマに惑わされてしまいます。

 発生する日時、場所、規模を示す精度の高い地震予知は現時点で困難で、いま予知できるという人は超能力者ですよ。しかし前兆研究は進んでいるので、そうした科学的な知見を踏まえて研究を進めています。

中島 私の専門は地震学で、地震で生じる地震波を解析して、日本列島下に沈み込むプレート(固い岩盤)の形や深さ、マグマの生成場所など、日本列島下で生じる地学現象の「枠組み」について研究してきました。

鎌田 かつて私は通産省の地質調査所で英語の論文ばかり書いていた研究オタクでした。それが京大へ転じてから、噴火や地震が発生するとテレビに引っ張り出されるようになりましたが、解説しても全然、世間に理解されない。それに驚いて「科学の伝道師」の道に入りました。

 いま私には首都直下地震、富士山噴火、南海トラフという喫緊の3つの大きなテーマがあります。この機会に、基本的なことから、正しい知識を解説していきましょう。