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《マグニチュード9、2~3分で津波が来る》南海トラフ地震発生が有力視されている「10年」とは?

専門家による最新研究 #2

被害は東日本大震災の10倍! 首都直下地震、富士山噴火にも備えよ。鎌田浩毅氏(京都大学名誉教授)、長尾年恭氏(東海大学客員教授)、中島淳一氏(東京工業大学教授)ら専門家による最新研究について議論した座談会「南海トラフ地震はいつ起こるか?」を全文転載します。(全2回の2回目/#1より続く 「文藝春秋」2022年4月号より)

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老朽化したインフラが被災

鎌田 では、首都直下地震が起こった場合の被害はどれほどになるのでしょうか。国の想定する最大震度7の揺れが起きれば、室内にあるピアノやテレビは飛び、耐震補強されていない古い木造住宅の多くは10秒で倒壊します。しかも被害はそれだけではありません。電気、水道、ガスといったライフラインが、最悪、1週間から数週間、遮断される可能性があります。

長尾 私も、インフラ面は非常に大きな問題だと感じています。冒頭で、昨年10月に東京・埼玉で起きた震度5強の地震は2005年にも同じ場所で起きたといいましたが、昨年は前回なかったインフラのトラブルが多発しました。とくに水道管の破裂が多かった。この15年余りでインフラの老朽化が進み、被害が拡大する恐れがある。

鎌田 地震の被害もさることながら、もっと心配なのが火災です。関東大震災では「火災旋風」と言われる火の竜巻が起き、死者10万人のうち9万人は火災で亡くなりました。いまも首都圏には木造住宅が密集した地域があり、地震を生き延びても、潰れた木造家屋の火事で命を落とす可能性がある。

中島 そうですね。

鎌田 その次に怖いのが水です。東京の地下には多くの下水道がはりめぐらされていますが、それが破裂して、地下鉄や地下街に下水が流れこむと、水死者が出るでしょう。

長尾 帰宅困難者の問題もあります。災害が発生した後、帰ろうとするから混乱が起きるので、企業は社員がオフィスにとどまれるよう、積極的に対策を進めるべきです。

鎌田 何百万人もの人が一斉に移動したら密集ができる。そこで「群衆雪崩」、人間による雪崩が発生して圧死するケースも出る。

 だから大災害が起きたら、4、5日は帰宅しない前提で、主要なビルには自家発電設備の設置と、水・食料・医薬品・簡易トイレの備蓄を義務づけるくらいしたほうがいい。

懸念される「群衆雪崩」

長尾 大賛成です。

中島 3・11は東北で発生した地震ですから、それを除くと戦後、首都圏が経験した大きな地震は1987年に起きたマグニチュード6・7の千葉県東方沖地震ぐらい。はっきり言って首都圏は大きな地震を経験したことがない。3・11の時の映像を見ると、渋谷駅などが大混乱に陥っていますが、いま想定されているマグニチュード7クラスの首都直下地震が起きれば、あの時以上の混乱になるのではと危惧しています。