昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

史上最悪の死傷者数…“現役最強ハンター”が遭遇した頭も首も狙えないクマ「100メートル離れてたってぶっ飛んで来る」

#1

2022/04/15

120頭以上を獲った男のモットーは「いるから撃つ」。「文藝春秋」4月号より、ライターの伊藤秀倫氏による「羆を撃つ 現役最強のハンター」を全文公開します。(全3回の1回目/#2#3に続く)

◆ ◆ ◆

ヒグマと人間社会との間で

「118頭まで数えてたのは、オレも覚えてる。それが7、8年前。それから毎年獲ってるから120は超えていると思うけど……途中からわからんくなったな」

 これまでに仕留めたヒグマの数を問われたハンターは、そう言ってあっけらかんと笑った。

 彼の名は赤石正男(69)。

 道東・標津町にあるNPO法人「南知床・ヒグマ情報センター」の「業務課長」として、ホームページのプロフィール欄にはこうある。

〈ハンター歴45年のベテランハンター。知床半島先端部から阿寒連峰までは、踏破。ヒグマを追っての単独狩猟歴は、トータルで120頭を超える。遠射、罠を使用しての捕獲は国内有数のエキスパート〉

ハンターの赤石正男氏

 彼のことを“現役最強のヒグマハンター”と呼ぶ人もいる。

史上最悪の死傷者数

 昨年、北海道におけるヒグマによる死傷者は、統計の残る1962年以降で、史上最悪となる12人(死亡4・重傷6・軽傷2)を記録した。

 ヒグマと人間社会との間で今、何が起きているのか。その軋轢の最前線でヒグマと対峙するハンターたちは何を考えているのか——。

 こうした本連載のテーマを掘り下げる上で、私がどうしても話を聞きたかった相手が赤石だった。

 その第一印象は、歴戦の猛者というよりは、痩躯の内に飄々とした精気が揺蕩(たゆた)う職人を思わせた。

 赤石が初めてヒグマを獲ったのは、成人して散弾銃を持てるようになってすぐのことだった。

「初めて銃持った年の10月に、いきなり自分ちの畑で獲ったよ。親子連れで『獲ってください』ってウチの方に歩いてくるもんだから、撃ってやったのさ。それが始まりだな」

 それから50年以上、今に至るまでヒグマを獲らなかった年はない。

z