昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

「安心・安全・健康のテーマパーク」とは? SOMPOが掲げるパーパス経営の極意

文藝春秋創刊100周年記念 トップインタビューVol.5

PR提供: SOMPOホールディングス

「安心・安全・健康のテーマパーク」を作ることによってあらゆる人が自分らしい人生を豊かに楽しめる社会を実現したいと語るSOMPOホールディングスの櫻田謙悟グループCEO。その熱き志を『文藝春秋』編集長・新谷学が詳らかにする。

櫻田謙悟氏
SOMPOホールディングス株式会社
グループCEO

新谷 学
聞き手●『文藝春秋』編集長

具体的な存在に変える装置がテーマパーク

新谷 SOMPOホールディングスは、「安心・安全・健康のテーマパーク」をブランドスローガンに掲げています。テーマパークと聞くと、東京ディズニーランドのような娯楽施設のイメージですが。

Kengo Sakurada
1956年生まれ。早稲田大学卒業後、安田火災海上保険(現・損害保険ジャパン)入社。アジア開発銀行を経て2010年、損害保険ジャパン社長、’12年、NKSJホールディングス(現・SOMPOホールディングス)社長就任。’19年、経済同友会代表幹事。 ’22年4月よりグループCEO 取締役代表執行役会長。
Kengo Sakurada
1956年生まれ。早稲田大学卒業後、安田火災海上保険(現・損害保険ジャパン)入社。アジア開発銀行を経て2010年、損害保険ジャパン社長、’12年、NKSJホールディングス(現・SOMPOホールディングス)社長就任。’19年、経済同友会代表幹事。 ’22年4月よりグループCEO 取締役代表執行役会長。

櫻田 2016年の新中期経営計画で提唱したとき、社内外からも同じ質問を受けました。実は私、東京ディズニーランドが大好きで、年間パスポートも持っています。

 私の定義だと、テーマパークというのは、抽象的なものを見たり触ったりできる具体的な存在に変える装置です。ミッキーマウスやパイレーツ・オブ・カリビアンに実際に会えて、握手もできるでしょう。日光江戸村だったら、テレビの時代劇で観ていた江戸時代に行けて、貸し衣裳を着れば江戸人になれます。

新谷 誰もが求める「安心・安全・健康」をサービスや商品に展開していく変換装置として、テーマパークと名付けたわけですか。

櫻田 そこまでは理解してもらえたんですが、「で?」と訊かれました(笑)。で、私は二つのことをやりました。まず、バミューダに本社を置くエンデュランスという保険会社を約6400億円で買収しました。ダイバーシティに富む社風に変えるために、目の前で文化の衝突を起こさせたわけです。

新谷 二つめが、介護事業への参入ですね。

櫻田 当時業界大手だったワタミの介護とメッセージを買収して介護事業に参入しました。現在は売上規模で業界第2位です。介護業界のマーケットは10兆円を超えますから損害保険業界より大きいのですが、6万の事業者がいます。飽和状態のレッドオーシャンに参入するのであれば、SOMPOならではのやり方が必要でした。

新谷 目をつけられたのが、リアルデータの活用ですね。

櫻田 まず、熟練の介護士さんたちに了解を得た上で、センサーをつけて仕事ぶりを可視化しました。

Manabu Shintani
1964年生まれ。早稲田大学卒業後、文藝春秋に入社。『Number』他を経て2012年『週刊文春』編集長。 ’21年7月より現職。
Manabu Shintani
1964年生まれ。早稲田大学卒業後、文藝春秋に入社。『Number』他を経て2012年『週刊文春』編集長。 ’21年7月より現職。

新谷 私の父も長く介護施設にお世話になったのですが、介護士さんによってスキルにばらつきがあります。

櫻田 ベテランだと経験則から「櫻田のおじいちゃんは、お腹が空くと機嫌が悪くなる」とか(笑)、瞬時に直感して対応しているわけです。それを解析してデータ化できれば、「見える介護」「予測できる介護」が可能になると考えたんです。

 介護では、利用者ごとにいつどのような介護を行うかスケジュールを立てるのですが、実際には計画と実績にずれが生じる場合があります。このずれを解消し、スケジュールを最適化するために、経験豊富な介護士の知見を解析した結果、21のポイントがあることがわかりました。

新谷 解析したデータは、どう活かされるんですか。

櫻田 その21のポイントをソリューションに組み込めば、経験の浅い介護士さんでも、ベテラン同様の効率よく質の高いサービスが可能になります。

 我々はスタンドアローンではダメだと思っていまして、この技術をほかの介護事業者にも広げたいし、輸出も考えています。

リアルデータプラットフォームが拓く新世界

新谷 種々雑多なデータを解析するのは、気が遠くなるような作業ではありませんか。

櫻田 8万人の利用者から得ているデータは、年齢や性別といった基本情報をはじめ、体温や食事、睡眠状況など、600種類ほどありますからね。それらの解析のために、パランティアというデータ分析では世界最高レベルのアメリカ企業と合弁会社を作りました。創業者の「優れたテクノロジーは、世の中や人を幸せにするためにあるべき」という哲学に共感したせいもあります。

保険事業や介護事業を通じて、日々、現場から上がってくるリアルデータを統合・分析するために世界最高レベルのデータ解析力を持つ米国Palantir Technologies Inc.と提携。
保険事業や介護事業を通じて、日々、現場から上がってくるリアルデータを統合・分析するために世界最高レベルのデータ解析力を持つ米国Palantir Technologies Inc.と提携。

新谷 「データは宝の山」というのは、あらゆる産業に共通します。文藝春秋は小さい会社ですが、愛読者のデータを集積すれば、好まれる本や関心の深いニュースのジャンルが掴めます。ところが現状は、雑誌や書籍の編集部ごとにデータがバラバラで、ビジネスに有効活用する手前で躓いています。

櫻田 銀行やメーカーや製薬業者など、いろいろな業界の人たちと話をして感じたのは、自分たちの本業に近いところでデジタルとデータを使いたい気持ちが強いことです。これは当然で、DXの基本ですよね。

新谷 そう考えると、介護は保険事業と繋がっていますね。むしろ、リアルデータの強みを生かす事業展開をされています。

櫻田 編集長がおっしゃったように、介護には上手い下手があります。しかし利用者が払う費用は、連動していません。質の高い介護事業者の介護報酬を上げる、というインセンティブを働かせてもいいと思うんです。

新谷 そうしたデータの使い方なら、業界全体の底上げに繋がるはずです。

 広範かつ膨大なリアルデータを統合・分析して、安心・安全・健康に資する新たなソリューションを生むSOMPO独自の仕組みが、「リアルデータプラットフォーム(RDP)」ですね。

櫻田 はい。我々は、リアルデータのプラットフォーマーになりたいんですよ。

新谷 保険や介護とは別の、新たなビジネスが生まれる可能性も感じます。

櫻田 年間で10万人近く出ている介護離職者を減らすために、医療機関、介護、薬局、宅配の食事や買い物などのサービスをプラットフォームに乗せて、ひとつのパッケージとして提供できる仕組みを作れないだろうかと考えています。

 その先も検討中です。

 私どもには、損害保険2000万人と生命保険数100万人のお客様がいて、交通事故や火災や台風被害のデータが、毎日大量に上がってきます。その解析に基づいて、事故や病気を未然に防ぎ、安心・安全・健康を提供したい。押し付けがましい形ではなく、いざとなったら保険や介護もありますと「予測できる人生」についてアドバイスするようなサービスを考えています。言い換えると、「嫌われないお節介」をしたい。

新谷 「人生のコンサル」みたいなことですか。

櫻田 あ、その呼び方のほうがいいな(笑)。

新谷 同じお節介でも、この人に言われたら聞くけど、あの人には言われたくないという違いがありますからね。

櫻田 私は入社当時から、保険料をいただいて保険金を払うだけでは限界が来ると考えていました。交通事故を起こしたり火災に遭ったときに生じるマイナスを、ゼロに戻す役目に過ぎないからです。しかも、自動車保険の支払いで加入のメリットを実感するお客様は、十人のうち一人しかいません。

新谷 万が一に備えての保険ですから、仕方ないのでは?

櫻田 しかし、人口減少で保険の市場は伸びませんし、自動運転技術が普及して交通事故が減れば、保険料収入も減ります。マイナスをゼロにするだけでなく、少しでもプラスになるお手伝いをしたいと考えるようになったわけです。

新谷 「昔は保険会社だったと言われたい」と、おっしゃっていました。

櫻田 「安心・安全・健康のテーマパークを作ることによって、あらゆる人が自分らしい人生を豊かに健康で楽しむことのできる社会を実現する」、これがSOMPOのパーパスです。「いてほしいSOMPO」から、「いなくてはならないSOMPO」に変わる必要があります。

エンゲージメントを高めるMYパーパス

新谷 会社としてのパーパスと、個々の社員のパーパスの関係性はどうですか。

櫻田 たとえば私自身を考えたとき、「SOMPOのCEOであること」が人生のパーパスでは、あまりに寂しい(笑)。人生の中に会社のパーパスが含まれているほうが、すっきりします。同じことは、社員にも言えるはずです。そこで昨年9月からリモートのミーティングを開いて、「皆さんの人生の中に会社があるんです。仕事で失敗したら人生の失敗なんて考えないでください」と呼びかけました。

新谷 3月から新聞広告などで始まった「SOMPO伝」というプロモーションには社員の方たちが登場しています。

櫻田 100名の役職員がSOMPOという舞台で「MYパーパス」を実現していく物語を「未来伝記」として記したものですが、おかげ様でエンゲージメントの手応えを感じます。

SOMPO伝は、社員一人ひとりがSOMPOという舞台で自分の志を実現していく物語を「未来伝記」として書き記したもの。豪華声優陣が朗読する100名の熱き物語は、SOMPOホールディングスWEBサイトの特設サイトにて公開中。
SOMPO伝は、社員一人ひとりがSOMPOという舞台で自分の志を実現していく物語を「未来伝記」として書き記したもの。豪華声優陣が朗読する100名の熱き物語は、SOMPOホールディングスWEBサイトの特設サイトにて公開中。

新谷 櫻田CEOにとって最大の転機は、36歳のときマニラにあるアジア開発銀行へ出向された経験ですか。

櫻田 日本人は私一人。同時にドイツから来た若い男性は、マクロ経済学の博士でした。ウェルカムランチのとき、彼が自信満々に「私は皆さんにない経験と知識をもっているはずなので、新たなプラスになるように尽力したい」と挨拶したら、盛大な拍手。私は、「国際機関の仕事は初めてで、右も左もわかりません。よろしくご指導ください」と……。

新谷 いかにも日本人的に。

櫻田 そうそう。拍手はパラパラ(笑)。半年の試用期間を経て正式採用なのですが、4カ月めにマネージャーから呼ばれました。仕事ぶりを褒められるとばかり思っていたら、「このままでは推薦できない」。ショックですよ。まず英語力。特に書く力が弱い。会議での発言がわかりにくいと指摘されました。クビになって帰るのはカッコ悪いですから置いて行かれまいと自分に鞭を打ちました。そんな厳しい世界で足掛け5年ほど働きました。

新谷 昨年は『BUSHIDO CAPITALISM』という本を英語でお書きになって、邦訳が今年出版されました。私も興味深く拝読しましたが、なぜいま武士道が、日本経済に必要なのでしょうか。

櫻田 新渡戸稲造博士の『武士道』は1900(明治33)年の本ですから、現代には適さない部分もありますが、ずっと私の道徳上の指針です。

 現在のキャピタリズムは、あまりにも分断や格差を生みすぎています。日本人には元々、武士が重んじた「公の意識」や「名こそ惜しけれ」といった道徳的な行動原理が根付いていました。世のため人のためという考え方は、近江商人の「三方よし」にも繋がります。私の理解では、武士道は実践知です。日本に元気を出してもらって世界のロールモデルになれるように、いまこそ武士道を学ぶべきだと。私も武士道の精神をライフワークとして、今後も日本の社会のために微力を尽くしていきたいと考えています。


Text: Kenichiro Ishii
Photograph: Miki Fukano

z