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「ポテトサラダを作るのがいかに大変かがわからない人間が、偉そうに言うてるわけですよ」上沼恵美子(67)が明かす、“主婦タレント”という肩書きへの思い

「ポテトサラダを作るのがいかに大変かがわからない人間が、偉そうに言うてるわけですよ」上沼恵美子(67)が明かす、“主婦タレント”という肩書きへの思い

上沼恵美子さんインタビュー ♯2

2022/04/15
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「なりたくなかった」漫才師で大人気になり、結婚後は夫の「条件」の下で仕事復帰するもすぐに夫の年収を越す。

 怖いものなしのタレント「上沼恵美子」の顔と、家事育児を完璧にこなし夫や姑に従う妻、母、嫁の顔。側から見ればアンバランスであり、もどかしさすら感じる上沼恵美子のそんな複数の「顔」は、テレビの前でアイデンティティに揺れ動いていた主婦の心を鷲掴みにしていった。

 上沼恵美子は主婦たちといかにして手を握り合ってきたのか。その根底にある「怒り」と「赦し」を訊いた。(全3回中の2回/1回目を読む)

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上沼恵美子さん

◆ ◆ ◆

――上沼さんのYouTubeチャンネルはコメント数がすごく多いんですよ。

上沼 らしいですね。私見ないんです。悪口書かれてると嫌なので。結構気が弱いんですよ。

――悪口はなかったです。主婦の方や普段あまりYouTubeを見なそうな世代の方のコメントが多いように思いました。

上沼 まあ嬉しい。誰かが言ってました。YouTubeを知らない人、高齢の方をYouTubeに引き込んだというので、感謝されるんじゃないかと。

 今はもう、何を言ってもだめでしょ。だからつまんないですね。ちょっときついこと言ったら全部カットになりますし。でも何も私、そんなむちゃくちゃ言ってるつもりないんですけどね。それを活字にしたらきついかもわかりませんけど。

 やっぱり言うニュアンスとか、こんなことを自分で言うのはなんですが、話術なんです。そういうものが加わってくると、少々きついことを言っても、緩和されたり笑いになったりできるのに、もう何もかもだめなんですよね。だから芸人殺しの時代ですよ。面白くなくても結構ですから、いらんこと言わんといてくれ、という世の中になりました。

 だからちょうど私、このテレビの世界を卒業するにはいい時期やったなと思います。年いってよかったなと思うのは、この時だけ。これで私がまだ45歳だったら複雑です。嫌やわと思います。まだまだ元気でやりたいのに、って思いますけど。私、これほんとに真面目な話、YouTubeを老後にしようと思って。

ファン層を広げた、ラジオの存在

――上沼さんのYouTubeチャンネルは老後の楽しみ。

上沼 はい。だからたくさんの人に見てもらいすぎなんですよ(笑)。一回たくさん見てもらうと「今回のはあまり見てもらってないわ」とか気になるじゃない。視聴率が嫌でやめたのに、YouTubeは再生回数が丸見えになるから、余計しんどいねって息子が言ってます。間違ったかもわからへんって。

 

――それでも、手応えは感じていますか。

上沼 サザンの桑田佳祐さんがYouTubeのチャンネルを見てくださって「上沼恵美子は天才や」って、深夜のラジオで言ってくれたって。「上沼さんと僕は同じ年なんだ」って。私、それちょっと嬉しかったんです。

ーーお二人ともずっと第一線で活躍し続けているのも共通してる。

上沼 桑田さんはTシャツと綿パンにギター持って、言うたら舞台衣装にひとつもお金かからず、あれだけ虜にするって、ちょっと魔法使いですよね。世代も超えてる。

 これは課題なんですよ、年寄りタレントにとっての。ファンをどう繋いでいくか。私のファンは高齢者ばかりじゃないんです。ラジオやテレビで主婦目線でものを言ってたのがよかったかわかりませんけど。

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