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平安高校同級生が振り返る、楽天・炭谷銀仁朗に本気で怒られたあの日のこと

文春野球コラム ペナントレース2022

 現在、阪神甲子園球場で行われている第94回選抜高校野球大会、高校球児のはつらつとしたプレーに毎日元気をいただいている。

 大会2日目、第2試合は延長13回タイブレークの死闘の末、近江が6−2で長崎日大を下した。そんな余韻に浸りながらバックネット裏をぶらぶら歩いていた。

センバツ甲子園で会ったのは今年からスカウトの足立祐一氏

「こんにちは」

 ビシッときめたスーツにピカピカの革靴。僕の目の前に立っていたのは、元犬鷲戦士の足立祐一氏であった。昨シーズンで現役を引退し、楽天イーグルスのアマチュアスカウトとして第二の人生を歩みはじめていた。

「かみじょうさん、ラジオ聴きましたよ(笑)」

「えっ!? ありがとうございます」

 何気ない会話にも心遣いがある。現役時代は若手捕手陣の兄貴的存在であり、エース則本昂大にそっと寄り添う女房役。ファン感謝祭では、なかなか着火しないステージをT−BOLANの大熱唱で盛り上げる神対応。あらゆる場面でイーグルスを支えてくれた存在だった。まもなく足立祐一がいないシーズンがはじまる事を理解した。

 3月25日開幕戦のマスクはどうやらドラフト2位ルーキーの安田悠馬がかぶりそうだ。対する千葉ロッテマリーンズもドラフト1位・松川虎生が予想されており、ルーキー捕手対決に注目が集まる。昨シーズン、レギュラー捕手として107試合に出場した太田光は左肩の修復中、バッティングのいい田中貴也はケガのため共に実戦復帰はできていない状態。捕手2人体制ならば安田悠馬、炭谷銀仁朗で開幕を迎える事になるだろう。

 春のキャンプやオープン戦で存在感を存分に発揮してきた安田悠馬。

 だが、さすが開幕戦の緊張感は相当なものだろう。しかしマリーンズと決定的に違うのは16年前、高卒ルーキーながら開幕戦のマスクをかぶった炭谷銀仁朗が楽天イーグルスにはいるということだ。そのプレッシャーを乗り越えた選手が一番近くで観ていてくれる。

 捕手というポジションが縁の下の力持ちならばそのさらに下で支えてくれる力持ち的存在が今シーズンの炭谷銀仁朗の意義なのかもしれない。

炭谷銀仁朗

 ただそれは二番手のキャッチャーという意味ではない。昨シーズンは9月に入り瀧中瞭太とバッテリーを組み、5戦で4勝するなど初の二桁勝利に大いに貢献した。3月16日静岡でのオリックス戦では先発の早川隆久に序盤はやりたいように投げさせ、3イニング目からは銀仁朗のリードで抑えるという決してワンマンリードではなく考えさせて育てる熟練の懐の深さも見せた。瀧中投手の2年連続の二桁勝利と楽天イーグルス球団史上初、左腕での二桁勝利に大きく貢献するシーズンになるのではないだろうか。

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