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連載完全版ドキュメント・北九州監禁連続殺人事件

緒方が松永に対して抱いていた「断ち難い未練とでも呼ぶべき特別な感情」

完全版ドキュメント・北九州監禁連続殺人事件 #97

2022/03/29

genre : ニュース, 社会

 起訴された案件だけで7人が死亡している「北九州監禁連続殺人事件」。

 もっとも凶悪な事件はなぜ起きたのか。新証言、新資料も含めて、発生当時から取材してきたノンフィクションライターが大きな“謎”を描く(連載第97回)。

北九州監禁連続殺人事件をめぐる人物相関図

松永の死刑判決と緒方の無期懲役判決が確定

 逮捕から9年9カ月を経た2011年12月12日、最高裁第一小法廷で、松永太と緒方純子についての上告をそれぞれ棄却するという、上告審判決が出された。

 これで松永の死刑判決と緒方の無期懲役判決が確定することになる。

 このなかで上告した松永側の主張については、棄却の理由として、そのすべてにおいて、〈いずれも刑訴法405条の上告理由に当たらない〉と退けられている。

 刑事訴訟法第405条とは、最高裁に上告のできる判決や上告申立理由について記したもので、〈1. 憲法の違反があること又は憲法の解釈に誤があること〉や〈2. 最高裁判所の判例と相反する判断をしたこと〉といった、いわば憲法や判例に反する原判決(控訴審判決)があった場合でないと適用されない旨が示されている。

 さらに同理由のなかでは、〈なお、所論(松永弁護団の主張)に鑑み記録を調査しても、刑訴法411条を適用すべきものとは認められない〉ともある。

 刑事訴訟法第411条の条文は以下の通りだ。

〈上告裁判所は、第405条各号に規定する事由がない場合であっても、左の事由があって原判決を破棄しなければ著しく正義に反すると認めるときは、判決で原判決を破棄することができる。

 1. 判決に影響を及ぼすべき法令の違反があること。
 2. 刑の量定が甚しく不当であること。
 3. 判決に影響を及ぼすべき重大な事実の誤認があること。
 4. 再審の請求をすることができる場合にあたる事由があること。
 5. 判決があった後に刑の廃止若しくは変更又は大赦があったこと。〉

 つまり、これらにも松永側の主張は当てはまらないということだ。そのうえで、同理由は以下の表現を使って松永の犯行を断罪する。

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松永の上告は棄却される

〈殺意が未必的なものにとどまるとはいえ、その犯行態様は残虐である〉

〈各犯行後の行動も非道である。各遺族の処罰感情も厳しく、連続監禁殺人等事件として地域社会に与えた衝撃も大きい〉

〈各犯行を実行させたものであって、これら各犯行を首謀し、主導したものである〉

 こうしたことから、5人の裁判官全員の一致した意見で、松永の上告は棄却されたのだった。

 一方の緒方については、控訴審判決を不服とした検察側が上告する“検察上告”であったが、5人の裁判官のうち4人が原判決を支持し、1人が原判決の破棄を求める反対意見を出すという結果で、上告が棄却された。