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巨人・小林誠司選手は、なぜあんなに叩かれなきゃいけないのだろう…

文春野球コラム ペナントレース2022

 野球界も芸能界も社会も、「損するキャラ」と「得するキャラ」がいます。何をやっても不思議と許される人がいれば、何をやっても叩かれてしまう人もいる。そんな残酷な現実があることをわかった上で、声を大にして言いたいことがあります。

 小林誠司選手は、なぜあんなに叩かれなきゃいけないのだろう――。

 僕の目には、小林選手は超一流の守備力を持った捕手に映ります。近年は打力と守備力のバランスがとれた大城卓三選手が中心捕手で、小林選手の出番は限られています。それでも、たとえベンチにいようと、小林選手の存在はすごく頼もしく感じます。

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 過去のジャイアンツには、村田善則さんや小田幸平さん、加藤健さんといった「愛されキャラ」の控え捕手がいました。3選手ともファンをなごませつつ、守りも堅い名脇役でした。そんな存在がいたことを思えば、小林選手への世間の風当たりはあまりに厳し過ぎるように感じてしまうのです。

小林誠司

重過ぎた「阿部慎之助の後継者」という十字架

 小林選手は正捕手に君臨した時期もあるので、自然と期待値が高くなるのはわかります。また、「阿部慎之助さんの後継者」という重過ぎる十字架も、ファンが小林選手に求める「及第点」が高まった原因なのでしょう。でも、捕手で打率.340、27本塁打、104打点(2012年)なんて、本来ありえない数字なのです。

 小林選手の守備を見てみてください。僕は技術的なことはよくわかりませんが、一緒に試合を見に行く純烈マネージャーの山本浩光さん(宇部商野球部の4番で甲子園出場)など、小林選手のリードやキャッチングを絶賛していました。たとえ投手が本調子ではなくても、投手に寄り添い勝利に導くのが小林選手の真骨頂でしょう。

 もちろん肩も強く、昨年の盗塁阻止率は.385と高水準でした。小林選手の強肩ぶりが球界中に知れ渡り、ランナーはよほど自信がある時でない限りスタートを切らない。そんな前提を思い出すと、この数字がより尊く見えるはずです。

 たしかに、バッティングは残念……な感じがあります。ヒットを1本打ったことがインターネットで話題になってしまうのは、球界広しといえども小林選手だけかもしれません。昨年6月にショウアップナイター(ニッポン放送)のラジオ中継のゲストに呼んでいただいた際、当時の小林選手の打率「.000」という数字の並びに切なさを覚えました。解説者の里崎智也さんに意見をうかがうと、「ゼロ、ゼロ、ゼロはホントに恥ずかしいですからねぇ~」と、お馴染みの名ゼリフを返してくださったのも印象深いです。

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