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西川龍馬が打つ時は鈴木誠也も打つ…同い年の2人のヒットは、海を越えて連動するのか

文春野球コラム ペナントレース2022

2022/04/28

 同い年、というのは不思議なものだ。社会に出てから出会った人でも、同い年であると判明した瞬間に妙な連帯感が生まれ、同時に「負けてはいられない」という対抗心も芽生えてくる。同じ分野で競っているのであれば猶更だろう。

 カープの中にも、同い年のグループがいくつかある。三連覇時に「タナ・キク・マル」と呼ばれた田中広輔・菊池涼介(丸佳浩は後に巨人に移籍)、「生年月日どころか生まれた病院まで同じ」という野村祐輔・安部友裕らの「89年度生まれ」が最も有名だが(補足すると菊池保則、ターリーも89年生まれである)、ファンの目から見ても「同学年だから仲が良いのだな」と納得させられる選手たち、それが「94年度生まれ」である。昨季までの在籍選手で言えば、投手では床田寛樹・矢崎拓也、野手では西川龍馬・鈴木誠也・髙橋大樹がこれに該当する。中でも、西川と鈴木の仲の良さは際立っていた。

カープ時代の鈴木誠也と西川龍馬

カープ94年度組 西川と鈴木の絆

 二松学舎高から12年ドラフト2位で入団した鈴木と、社会人野球・王子を経て15年ドラフト5位で入団した西川は、カープにおいては「同期」ではない。そんな彼らを結びつけたのは、やはり「同い年」という要素なのではないだろうか。

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 思い返せば試合前の練習時(中日戦の場合、そこに同い年の京田陽太が加わることもある)、試合中のベンチ、試合後のヒーローインタビューで野間先輩に水をかけに行く時、いつでも西川と鈴木は一緒にいた。内野手だった西川が、19年から外野を主に守るようになると、その絆は更に深まったように見えた。

 西川の入団時から、お互いに相手を「天才」と評し、切磋琢磨し続けてきた二人。試合を見ていると、3番の西川が出塁すれば4番の鈴木が返す、といったように「二人が連動して打つ」というシーンが多かった印象がある。たとえば昨年9月9日の中日戦、初回に3番・西川の2ラン、4番・鈴木のソロと、二者連続ホームランにより3点を先制し、チームを勝利に導いたのは記憶に新しい。

 しかしここで疑問が沸き起こってくる。西川と鈴木のヒットは、本当に連動して放たれていたのだろうか。昨季のデータを用いて検証してみたい。

カープ94年度組の分類 ©オギリマサホ

西川が打つ時は鈴木も打つのか

 21年シーズン、西川と鈴木がともに出場したのは126試合。そのうち、両者が2安打以上を放ったのは13試合、逆に両者が無安打だったのが10試合となる。この数字だけを見ると、さほど連動はしていないように見える。

 一方、月間打率を見てみると、昨年5月が西川.245、鈴木.286、6月が西川.271、鈴木.230と、揃って低調気味となっている。西川は濃厚接触者、鈴木はコロナ陽性となり、それぞれ5月後半に離脱を余儀なくされたため、その影響だったのかも知れない。この二人の不振が、カープ交流戦最下位の一因ではないかと考える人も多く、主軸の二人に対する風当たりも強かった。逆に、9月には西川.333、鈴木.381と揃って好調となり、終盤の追い上げに繋がっていったのである。

 ここから考えるに、一試合単位での連動性は確認できないものの、好調・不調の時期は両者共通する部分があり、「西川が打つ時は鈴木も打つ」という印象に繋がっていったのではないだろうか。ファンからしてみれば、二人がともに打ってカープが勝つのはもちろん、活躍した二人が仲良く喜んでいるのを見るのが嬉しかった、というのも本音である。

 ところが昨オフ、鈴木はポスティング制度を利用して、大リーグ移籍を目指すことを表明した。既に髙橋大樹は戦力外通告を受けており、94年度生まれのカープの野手は西川一人だけになってしまったのである。

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