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いまや、日本を魅力的に思って来日する外国人は、実は「安さ」に魅力を感じているだけの状態ではないでしょうか。

【和田】「安いから来る」ただそれだけ。

【中野】日本はそういう国になったんですよ。苦労搾取がその要因のひとつかもしれない。合理的に物事を進められなくなった原因を求めるならそこでしょう。そう私は思っています。

変化を作る人は排除される

【中野】結果を重視していれば、もっと実力のある人が力を得て、「こういうふうにIT化を進めましょう」「コロナ対策はこういうふうに科学会をやりましょう」などと、もっと効果的に効率よく実現できたのではないか。

変えようとする人がどんどん排除されてきた。いまの日本の姿は、すべて過去の私たちの振る舞いの結果です。

本質的には、これも現状維持バイアスだと思います。国家として、組織としての現状維持です。

実力のある人は“悪”になる

【中野】現状維持のほうがいいと多くの人が思っていることもありますが、それ以上に、実力のある人は“悪”とされる。

新しいことを始める人がいると、既得権益を握った人たちは「自分たちの立場をどうしてくれるんだ」と考える。だから、実力のある人から真っ先に首を切られる。

東京オリンピックの開会式の演出を担当していた演出家の方の問題など、詳細はわかりませんが、透けて見えるものはまさしくそうですよね。

実力があって、新しいこと、かっこいいことをやろうとすると、ある立場の人からは最も“悪”になる。「体制を壊す人」ですね。体制が強ければ強いほど、そういうことが起きる。

実力のある人なんか、この国では歓迎されません。まして女性は。

中野 信子(なかの・のぶこ)
脳科学者、医学博士、認知科学者
東日本国際大学特任教授。京都芸術大学客員教授。1975年、東京都生まれ。東京大学大学院医学系研究科脳神経医学専攻博士課程修了。2008年から10年まで、フランス国立研究所ニューロスピン(高磁場MRI研究センター)に勤務。著書に『サイコパス』『不倫』、ヤマザキマリとの共著『パンデミックの文明論』(すべて文春新書)、『ペルソナ』、熊澤弘との共著『脳から見るミュージアム』(ともに講談社現代新書)などがある。
和田 秀樹(わだ・ひでき)
精神科医・国際医療福祉大学赤坂心理学科教授
1960年大阪市生まれ。1985年東京大学医学部卒業。東京大学医学部附属病院精神神経科、老人科、神経内科にて研修、国立水戸病院神経内科および救命救急センターレジデント、東京大学医学部附属病院精神神経科助手、米カール・メニンガー精神医学校国際フェロー、高齢者専門の総合病院・浴風会病院の精神科医師を経て、現在、国際医療福祉大学赤坂心理学科教授、川崎幸病院顧問、一橋大学・東京医科歯科大学非常勤講師、和田秀樹こころと体のクリニック院長。

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