全国の歯科医約1万5000人が入会する公益社団法人「日本口腔インプラント学会」の専務理事が、パワーハラスメントによる精神的苦痛を与えたとして、同学会の元事務局長に損害賠償請求訴訟を起こされていたことが「週刊文春」の取材でわかった。
同学会はデンタルインプラントの高度な専門的技能を持つ歯科医の養成を図る目的で1986年に設立。「口腔インプラント指導医」や「口腔インプラント専門医」などの資格を認定する団体である。
同学会の事務局長に稲本秀男氏(仮名)が就任したのは2020年7月のこと。稲本氏が語る。
「勤務を開始して一週間後にはパワハラの兆候を感じ始めました。専務理事の簗瀬武史氏(62)から毎日のように叱責のメールが届くようになったのです」
簗瀬氏は埼玉県朝霞市に歯科クリニックを開業し、神奈川歯科大の客員教授や東京医大の講師を歴任。2009年、同学会の理事に就任し、認定委員長や財務委員長などの要職を経て、2020年に専務理事に昇格している。
裁判の証拠にもなっている“パワハラ”が起きたのは2020年8月4日のことだったという。8月13日に開催される臨時理事会の招集に関するメールのやりとりにおいて、簗瀬氏と稲本氏の間で意思の疎通がうまく図れず、簗瀬氏が激怒。午後4時8分に学会に電話をかけ、稲本氏を罵倒し始めた。小誌は約10分間の会話の音声を入手(音声は「週刊文春 電子版」で公開)。そこには下記のような簗瀬氏の発言が記録されていた。
「だからお前、俺に報告がないだろうが! 本当に!」
「一日に何回イライラさせるんですか!」
「●(職員)に聞いてみてくださいよ。●(理事)と簗瀬とね、●(理事)の中で誰が怖いですかって」
「もうむちゃくちゃじゃないか、仕事が」
「馬鹿でしょ、ハッキリ言って」
さらにその後、簗瀬氏は稲本氏を自身のクリニックまで呼びつけ、1時間半にわたり叱責を続けたという。