折々のファッションから見える愛子さまのご自覚とは。「文藝春秋」2022年5月号より、皇室ジャーナリストの佐藤あさ子氏による「愛子さま『お召し物ダイアリー』」を全文転載します。(全2回の1回目/後編に続く)
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雅子さまの思いやスタイルを継承
3月17日、ご成年を迎えたことを受けて開かれた初めての記者会見。天皇陛下の長女・愛子さまがお召しになったのは、春らしい若草色のスーツだった。肌の色によく合っていて品が良く、パールのアクセサリーの輝きを一層引き立てていた。
「父から聞きましたのは、聞いてくださっている皆さんの顔、お一人お一人の顔を見ながら、目を合わせつつ、自分の伝えようという気持ちを持って話していくというのがコツだというふうに、他にもございますけれども、そのようなことをいろいろ教えていただきました」
こう天皇陛下からのアドバイスを明かされたところなどは、愛子さまのユーモラスなお人柄がよく表れていたと思う。記者全員のことをゆっくりと見渡すようにお話しになり、優しげながら目力のある豊かな表情に堂々たる貫禄を感じた。
成年会見は若草色のスーツ
そのお姿を拝見して、雅子さまが2019年5月、天皇陛下の即位をお祝いする一般参賀でお召しになっていた鶸(ひわ)色のドレスを思い起こした。若草色も鶸色も、ニュアンスのある絶妙な色味で、やわらかな印象を与えていた。愛子さまは一連の成年行事の際にお召しになったジャケットと同様に、今回もテーラードカラーのジャケットをお選びになり、雅子さまの思いやスタイルを継承されているようだった。
一方で、袖口にあしらわれたフレアなデザインや、愛子さまのご定番ともいえる“ショート丈”など、細部には可愛らしさを感じさせるガーリーなテイスト。ヘアアレンジにも愛子さまのこだわりが見てとれた。
会見の後、ある宮内庁関係者は感極まった様子でこう話していた。
「ご立派、その一言に尽きます。ご自分の短所についても『小さい頃から人見知りのところがございますので、これから頑張って克服することができれば、と思います』とお話しになりました。未熟さも含めてご自分をしっかり見つめているという、こうしたご姿勢こそ、多くの人の心に響いたのではないでしょうか」
近年の愛子さまを拝見するたびに私は心が安らぐ。それは天皇の長女という特別なお立場にあることの“ご自覚”をとても強く感じるようになったからだ。今回は学習院初等科に入学された頃からの取材メモを振り返り、折々のお召し物も紹介しながら、愛子さまの“ご自覚”の芽生えの軌跡を辿ってみたい。