初の肉声は中学入学式
私が初めて愛子さまの肉声を聞いたのは2014年4月6日、学習院女子中等科の入学式だった。新宿区戸山の緩やかな坂を上ったところにある学習院女子中等科の校門前には大勢の記者や皇室ファンが集まっていた。この日は晴れたり曇ったり。時間が経つにつれて暖かな春の日差しを感じたが、朝は肌寒かった。
愛子さまは初等科時代と変わらぬセーラー服だったが、ネクタイの色が赤から紺に変化。髪はサイドを三つ編みにしてポニーテールでまとめていて、大人びて見えた。
「ありがとうございます」
「楽しみにしています」
校門前で報道陣から入学を前にした気持ちを問われた愛子さまは大きな声でハキハキと答えられた。女の子らしい少し高い声。私たち記者にとっては、初めて質問にしっかり答えていただいた快挙の瞬間だった。記者たちは「やった」「よかった」と喜び、現場は一気に活気づいた。
明るさに満ちた愛子さまの受け答えは、3週間前とは大違いだった。3月18日、学習院初等科の卒業式でも愛子さまは報道陣から声をかけられたが、恥ずかしそうな表情を浮かべ、記者たちと目を合わせないようにしているようだった。どう答えるベきか困ったようにすぐに横にいた雅子さまに相談されていたが、お声を聞き取ることはできなかった。卒業式から入学式までの短い間に、報道陣への受け答えの練習をされたのかも知れない。内情を知る前出の宮内庁関係者が説明する。
「なぜ注目されているのか、初等科時代はご自分のお立場を理解されていなかったと思います。愛子さまは本来とても明るく活発でひょうきんなご性格です。でも人前に出ると、恥ずかしがり屋さんの性格もあって身構えてしまう。初等科時代は欠席が続き不登校気味の時期もありましたし、『笑顔が少ない』とも言われていたけれど、そんなことはない。外では本来の自分を表現できなかったのだと思います。
両陛下は『自分の立場を自然にわかっていってほしい』というスタンスでした。折に触れて教えてはいらしたけど、強く言い聞かせたり、無理強いしたりすることはなかった。
転機は中等科ご入学の頃。両陛下は愛子さまに皇族としての活動の幅を広げてほしいと思うようになられたそうです。愛子さまご自身も皇族としてのご自覚が芽生えてきた頃でした。親子揃って、皇族教育の“実践開始”だ、というタイミングが一致したのだと思います」