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実は、佐田さんが産まれた5年後、両親は3人目を計画し、母親は妊娠。当時佐田さんは、「お姉ちゃんになるんだよ」と言われていたのだ。

「幼かった当時は、お姉ちゃんになるんだよと言われて、純粋にうれしかったです。流産という悲しい結果になってしまいましたが、今は、“兄のための私”“私のための弟妹”という子供の産み方をする両親は間違っていると思います。さらに、もし弟妹が生まれていたら、家族のリソースはさらに割かれざるを得ないので、私はもっと寂しい思いをしていたかもしれません」

佐田さんは両親に、心療内科に通院中であること、主治医からは、「家庭環境がつらかったために、小さい頃のトラウマが強く、慢性的な疲労状態にある」と言われたこと、うつ病と診断されて治療中であることを涙ながらに訴えると、両親はショックを受けつつもおおむね理解を示してくれた。

タブーは家庭を歪ませる

筆者は、家庭にタブーが生まれるとき、「短絡的思考」「断絶・孤立」「羞恥心」の3つがそろうと考えている。

佐田家の場合は、「兄のための佐田さん、佐田さんのための3人目」と出産計画したという佐田さんの両親に「短絡的思考」が見られたように感じる。近年注目されつつあるヤングケアラー問題は、子供が年齢的に見合わない重い責任や負担を負うことで、本当なら享受できたはずの、「子供としての時間」と引き換えに、家事や家族の世話をしていることが問題とされている。佐田さんはまさに、「子供らしくいられる時間」や「子供らしくいられる場所」が得られないままに成長。その反動か、大人になってしばらくした今、身体的・精神的不調に苦しめられている。

幼い頃から佐田さんは「寂しい」「もっとかまってほしい」ということを、両親にも学校の先生にも、友だちにも言えずに生きてきた。そして、兄の存在を「煙たい」「恥ずかしい」と思っていることを、「家族の一員としてあってはならないこと」だと自分の中に押しとどめ、蓋をし、さも何とも思っていないかのように平然と振る舞い続けた。

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