ここまで意図が読めないのはかなり極端な仮定ですが、まさに指示をスルーせずに、そのままきっちり「言葉」を受け取っていることがわかります。
「いいから俺の言う通りにしろ!」という上司にとっては、仮定に挙げたような人たちほど期待通りの部下はいないはずです。しかし、実際には職場などで問題になってしまいます。なぜでしょうか? スルーしないほうがよいならうまくいくはずです。
大事なのは言葉そのものではなく文脈
スルーしないためにうまくいかない理由、それは「文脈」が無視されているということです。問題の場面では文脈がくまれず、ただ字義通りに受け取られて言葉が機能不全に陥ってしまっています。
通常、怒られて「家に帰れ!」と言われても帰ることはありません。「家に帰れ!」と言われて帰らない人は、上司の言葉を“スルー”しています。しかし、スルーすることで言葉は機能しています。
スルーするとは、文脈を踏まえることで言葉にフィルターをかけ、自分の価値を付加し、コミュニケーションや仕事を機能させることであることが、こうした仮定を見ることでよくわかります。
話を聞いているのに「聞いていない」と言われる理由
文脈を踏まえるとは、「自分の文脈」で言葉や仕事に接するということです。
人間は成長する中で、「他人の文脈」「場の文脈」などを取捨選択しながら「自分の文脈」に統合していきます。
守破離という言葉があるように、仕事でも新人から中堅、ベテランと習熟していくのは、「自分の文脈」が育まれていくということにほかなりません。
特に、仕事が複雑になってくるほどに「文脈」の重みは増します。
真面目な人ほど「人の言葉をそのまま正確に受け取ることが大切」ということばかりに気を取られて、「文脈」を捉えることができなくなってしまっているのです。
先に見た、人の話を聞いているのに「聞いていない」と怒られてしまうのは、こうした事が原因であると考えられます。
その結果、萎縮して、「文脈」ではなく、相手の「機嫌」をうかがうようになり、「字義通り」と「機嫌」とを行ったり来たりするようになり、いつまでたっても「文脈」にたどり着けない悪循環に陥ってしまうことも珍しくありません。