ひろゆきの言葉が強い根本的な理由
「自分の文脈」を持つことは社会からも歓迎されます。
ここまで解説してきましたように、スルーするとは自分の文脈によって言葉にフィルターと自分の価値を付加することです。そうして初めて言葉が機能する、言葉に命が宿るのです。
ひろゆきさんというと「論破」で有名ですが、相手に振り回されず言葉をスルーできるのは、決して論理やメンタルの力によるものだけではありません。
実は背景として「自分の文脈」をしっかりと持っている、ということがあります。そのことが単に論破することだけにとどまらない影響力をひろゆきさんの存在に与えています。
「自分の文脈」を持つことで、論理の合わないものはフィルターがかかり、自分の視点が付加されることになる。これは、社会から見た言葉やコミュニケーションの機能に適合的なのです。
ひろゆきさんの言葉が強い力を有する理由の一つは、そのためだと考えられます。
反対に、言葉を真面目に受け取ってただ渡すだけでは、文字通り“単純再生産”ということになり、なんの価値もそこに生まれません。ただ、権威や俗論を“拡大再生産”したような言葉も同様です。影響力など持ち得るはずもありません。
スルースキルを実践し「自分の文脈」を育む
私たち凡人が、ひろゆきさんとまったく同じようになることは難しいですが、スルースキルを身につけることは誰にでもできます。
この記事では紙幅に限りがありますが、要点を言えば、「自分の文脈」を意識しながら、フィルターを通らない言葉は流して受け取らない。
そうして自分の文脈から他者とコミュニケーションを取っていくのです。そのほうが断然うまくいきますし、先に挙げました8割スルーする社長の例のように仕事でも評価されるようになります。
スルースキルを実践し、「自分の文脈」を育んでいくと、徐々に他人の言葉に振り回されなくなり、自分の言葉が力を持ち、仕事やコミュニケーションの質が変わることを実感するようになります。
大阪大学大学院修了後、大手電機メーカーに勤務。その後、応用社会心理学研究所の調査研究ディレクターを経て、精神科医・岡田尊司氏(『母という病』などの著者)が顧問を務める大阪心理教育センターにて心理カウンセラーとしてトラウマケアに従事。現在は、ブリーフセラピー・カウンセリング・センター代表取締役/カウンセラーとしてさまざまな症例の解決に取り組んでいる。著書に『プロカウンセラーが教える他人の言葉をスルーする技術』(フォレスト出版)がある。
