そして要求があれば、遺留分を子どもの口座に振り込むようなこともあるという。
血を分けた親子がここまで揉めて、死後まで完全に断絶することに、殺伐としたものを感じるが、現実に起きている家族間の壮絶な争いを思うと、こうした機関の存在の必要性を改めて感じるのであった。
いろいろな家族を取材して感じるのは、親と子のうちの一人との関係がこじれた時に、親は子のきょうだいや親族を自分の味方につけて、その子どもを孤立させることが多いということだ。
このように法人の「契約家族」のサービスに頼らない家庭が必ずしも円満というわけではなく、一人の子と絶縁関係にあっても、他の子どもに頼り、死後の相続まで任せることで、外部にはその家族の亀裂が見えてこないだけなのかもしれない。
「子どもに負担をかけたくない」という依頼者
高齢化に伴い、親子で契約をする人も増えてきた。
70代の子と90代の親の場合、子が契約のキーパーソンとなって、もしも親より先立つことや、自分が認知症になったときの場合に備えて、契約を結んでおくという。これはこれからの時代の切実な問題である。
80代の親と50代の子の親子関係と、70代の親と40代、30代の子の親子関係は大きく意識が違うことを、ここでも聞いた。
40代以下の世代では、親の介護をして看取る意識がかなり薄くなっている。世代間の意識の違いがまたこれからの家族の問題を変えていくだろう。
りすシステムで契約をすると、「私のおぼえがき」を作成し、公正証書による契約へと進む。「私のおぼえがき」を基に、契約者の希望に沿ったサポートがされる仕組みだ。ペットの処遇やデジタル記録の消去、死後の形見分けまで、きめ細かいサポートは多岐にわたる。
同法人のホームページを見ていたら、「死後事務の内容」でライフスタイルや価値観に応じて自由に追加できるという「自由選択型死後事務」の欄に、「死後もお世話になった方へのお祝いや香典などの社会参加の代理・代行」とあったのが気になった。