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殺伐とした印象だった「契約家族」だが…

生前に長く親と絶縁関係にある人が、親の死で、それまでの確執をすぐに水に流すのは難しい。もし死後すぐに手紙を渡しても、読まれずに破棄されてしまうかもしれない。

でも、死後5年後、あるいは10年後なら、年を重ねた子どもの気持ちにも変化が見られるのではないだろうか?

こうしたサービスを利用して、生前に伝えられなかった親の思いを手紙に託すのも、これからの時代に希望をつなげるものだと思った。ただ、前述の母親の手紙のように、恨みつらみを死後に届く手紙に書いてあの世に旅立つのだけは自重したい。

死後に遺された家族がさらに揉めるようなことは慎みたい。手紙というものは後々まで残る。たとえ破り捨てられても、読んだ人の心にいつまでも残るものだ。

シニア世代は晩年をどう生きるかが試されている気がする。

わかり合えなかった子どもを恨み、子孫を呪う先祖になるのか、今生の哀しみを自分の胸に秘めてあの世に逝き、子孫の幸せを祈る先祖になるのか?

あなたはどちらを望むだろうか。

「契約家族」という言葉に今までは正直なところ、なにか殺伐とした印象をぬぐえなかったが、契約者自身がこうした生前契約を上手く自分に合った活用をしていくことで、子どもに負担をかけずに、最期まで自分らしく、自己責任で人生を修め、あの世に逝くことが出来るのではないかと感じた。

「契約家族」の契約が、子ども世代の負担を減らし、家族を分断するのではなく、家族を繋げるような役割を果たしてくれることを期待したい。

橘 さつき(たちばな・さつき)
日本葬送文化学会常任理事、ライター
1961年、東京に生まれる。早稲田大学第二文学部演劇専修卒業。日本葬送文化学会常任理事。自身に起きた問題をきっかけに、問題を抱えた家族の葬送を取材、活動。「これからの家族の在り方と葬送」をテーマに執筆を続けている

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