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私、ちゃんとカープが好きだった 自粛期間に覚えた“守りの応援”に関する一考察

文春野球コラム ペナントレース2022

2022/05/05

 白状します。2022年プロ野球開幕戦横浜×広島、これが私にとって2年ぶりの球場観戦となりました。まる2年です、あれ、じゃあ3年ぶりなん? うわあ。ひくわ。文春野球の原稿を毎年書いていながら球場に行ってなかったのです。図々しいですね、ごめんなさい、応援バットを投げないで下さい。

 ハマスタに向かう道すがら、もう涙ぐんでいた。おばさんは涙もろい。球場が見えたらもう我慢できなかった。泣いた。

「あああ! ゲートかわってる!」
「あああ! 知らないお店ある!」
「あちこち改装しとってじゃ!」
「知らんポケストップできとる!」

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まる2年のテレビラジオネット応援も嘘じゃなかったよなあ

 緊急事態宣言が出て観戦チケットを数枚まとめて払い戻したあの日、こんなにも期間があくとは思わなかった。なめてたパンデミック。途中有難いことに何度も観戦のお誘いをいただいたし、自分でもチケットを買おうともした。でも我慢した。自分が球場で罹患し、他人にうつしたらいけないと思っていたのだ。その時は。

 久しぶりの球場、あー思い出した。この雰囲気。アナウンス、シートの感触、野球ファンの声、球場メシ、風、空の暮れなずんでいく色。左隣のカップル(死語)のぎこちない野球会話もほほえましい。右隣のおじさんの語りかける「みとりぃ、小園は今年首位打者獲るで!」の『小園は俺が育てた感』も懐かしい。

 一番「あ、なまで観戦しとる」と感じた瞬間があった。外野にいたのだが、後ろで花火が上がった直後、ぶわっと熱い空気がきたんですわ。あんな上であがってる花火の熱をじかに感じるなんてそりゃテレビではないわな、とまた涙ぐんで空を見上げた。白い煙が流れて残っていた。コロナ禍の応援方法は大きく様変わりをしていてそれも「今」だなあと思った。

 そして開幕戦、カープは勝った。現地の勝ち試合。最高。

開幕戦で先制適時打を放った末包昇大

 帰り道の2チーム入り混じった混雑のなかゆらゆらと観戦後の言葉を聞きつつ駅まで歩き電車に乗る。心地いい。

 ここで「やっぱり野球ファンは球場に行かねば!」「現地観戦が一番」「あの球場の雰囲気は何にも代えがたい」「みんな、感染に気を付けて観戦しよー! 球場最高」と締めくくるとコラムとして平凡だがきれいかもしれない。が。ぐるぐる考えながら球場の帰り道、思いついたことがある。

 まる2年のテレビラジオネット応援も嘘じゃなかったよなあ、と。

 私、ちゃんとカープが好きだったよ。

 応援は枯渇しなかった。

 勝って嬉しい、負けて悔しい、選手の怪我を心配し、去就を気にして、ネットでも記事を読み漁る。かわらない日常であったことよ、テレビに向かって大声を出してしまい膝のネコに逃げられることまで。

 そのテレビすら観られない日、時間が空いてすぐにスマホで野球速報確認するのも応援だし愛じゃないか。応援の気持ちとしか表現できないあのアプリをタップする速度。

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