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「『9割が飛ぶ』と言われる世界で…」47歳の普通のOLが、“受刑者専用”の求人雑誌を作った数奇な経緯

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 罪を犯して刑務所に数年間いた人が出所する時、新しい生活への希望とともに襲いかかるのが「再就職」への不安だという。

 生活していくためにも自尊心を取り戻すためにもお金は必要だが、犯罪歴がある人間が働き口を見つけるのは簡単ではない。そんな犯罪歴・非行歴のある人を対象に、刑務所や少年院に配られている求人情報誌がある。
    
 それが、2018年に創刊した日本で初めての受刑者向け求人誌『Chance!!』。編集長を務める三宅晶子さん(51)は、自らも非行少女だった過去を持つ。せっかく刑務所から出所しても、2人に1人は刑務所に戻ると言われる昨今、三宅さんが求人誌をつくった理由とは――。(全3回の1回)

◆ ◆ ◆

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<1回>
――三宅さんが『Chance!!』を創刊された2018年3月から4年になりますが、これまでどんな反響がありましたか?

三宅 最初は750部、掲載企業13社から始まった『Chance!!』も今では3500部、これまで掲載してくださった企業はのべ90社となりました。全国で240カ所の少年院、刑務所、拘置所などに置いてもらい、受刑者個人にも送っています。刊行は3カ月に1冊ペースですが、だいたい1冊ごとに70件くらいの応募がありますね。

©文藝春秋 撮影/宮崎慎之輔

――そのうち何人くらい内定が出るのでしょう。

三宅 私たちが把握しているだけで4年間で応募が1200件あり、実際に内定したのが212人かな。そのうち、働きはじめた後に退職したのが55~56人。“飛ぶ”、つまり行方不明になってしまった方が20人。就労中や退職後に逮捕された人も12人います。内定した人の中で、同じ職場で半年以上続いた人が42%、1年以上続いた人が28%くらい。低く聞こえるかもしれませんが、出所者雇用は「9割が飛ぶ」と言われる世界なので、そう悪くない数字だと思ってます。

「元受刑者と聞いて、正直に言えば最初は怖いと思いました」

――そもそも、三宅さんはどうして受刑者向けの求人誌を作ったんでしょう。

三宅 2014年に10年いた会社をやめるまでは普通のOLでした。このような道に入ったのも、会社をやめて次の仕事を探している時に、社会人勉強会で知り合った友人の社長から「引きこもりや犯罪歴のある人向けの自立支援の学校を作ろうと思っているんだけど、それが実現したら講師になってくれないか」と誘われたのがきっかけです。

©文藝春秋 撮影/宮崎慎之輔

――それまでは受刑者支援の活動などをしていたわけではないのですか?

三宅 そうですね。講師の提案を受けたあとで、見聞を広めるために非行歴や犯罪歴のある方の自立支援施設などのボランティアに参加したりはしました。もともと教員免許も持っていて教育や人材育成の分野の仕事がしたいとは思っていたのですが、誘われた時は「え、そこ?」って驚きました(笑)。元受刑者と聞いて、正直に言えば最初は怖いと思いましたし。でも「あなたは向いていると思う」と言われて、私の役割があるのかもしれないなと思って。