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「出所したら氷結を飲んでみたい」仮釈放後に就職する会社が決まっていた無期刑の受刑者が、出所後に望んだ2つのこと

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 受刑者向け求人情報誌「Chance!!」を創刊し、刑務所を出た人が直面する働き口問題の解決に取り組む三宅晶子さん。

 これまでに「Chance!!」を通じて200人以上の元受刑者が就職しているが、三宅さんにはその中で、とりわけ印象に残っている人がいるという。(全3回の3回目)

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――「Chance‼」を通じて内定された方にはどんな方がいるんですか?

三宅 無期刑で服役している時にある会社に内定したにもかかわらず、出所を待たずに亡くなったMさんのことは今も毎日思い出します。無期懲役は文字通り刑期が決まっていない刑ですが、刑の執行から30年で「仮釈放審理」というプロセスが始まります。刑が終わることはないけど、社会の中で更生に向けて生活するということですね。その時に仮釈放が許される条件の1つとして、身元引受人がいることが必要。一般的には親族が身元引受人となる場合が多いですが、「Chance!!」では応募企業に「採用内定した方で身寄りのない方が仮退院、仮出所する際の身元引受人となる」ことを承諾して頂いているので、身元引受人のアテがない無期刑の人が求人に応募するケースは結構多いんです。

©文藝春秋 撮影/宮崎慎之輔

出所したら「氷結を飲んでみたい」

――内定すれば、就職先と同時に身元引受人も確保できるということですね。

三宅 そうですね。今も、10年以内に仮釈放の可能性がある無期刑の受刑者が3人内定して仮釈放を待っている状態です。亡くなったMさんは飲食系の企業に内定していたのですが急に病状が悪くなり、危篤状態となりました。その後なんとか意識を取り戻して3回ほど面会で話すことができましたが、刑務官の方から「かなり厳しい、いつ亡くなってもおかしくないので覚悟してください」と伝えられていました。葬儀の時に用意するつもりで「出たら何が飲みたい?」「何が食べたい?」と聞くと、Mさんは自分の余命を知ってか知らずか、「氷結を飲んでみたい」「田舎料理が食べたい」と、目を細めて話していました。

©文藝春秋 撮影/宮崎慎之輔

――それは切ないです……。

三宅 内定先の企業の社長も遠方から面会に来てくれて、Mさんが回復する可能性が極めて低いのはわかっているのに、わざわざ彼の名刺を作って、「仕事がいっぱいあるから待ってるよ」と。Mさんもすごくうれしそうにしていたんですが……。