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〈上島竜兵、逝く〉八畳一間1万8000円の部屋からのスタート、悩む上島に志村けんは言った「本当に好きなのは…」

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2022/05/11
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恩師・志村けんとの出会い

〈以降、『スーパーJOCKEY』での熱湯風呂、『世界の超豪華・珍品料理』でのゲテモノ食いと、リアクション芸人としてさまざまな番組で活躍。『爆笑!スターものまね王座決定戦スペシャル』では野村沙知代や橋田壽賀子、西田敏行のネタを披露してものまね芸も開花させる。そして絶好調の94年、ものまね芸人広川ひかると結婚する。〉

 営業で一緒になったりしてたから、カミさんが十代の頃から知っていました。誰か女の子を誘って飲もうとリーダーと一緒に電話をかけたなかで、唯一出たのがカミさんだった。するとリーダーが急に具合が悪いと言い出して帰っちゃった。気を利かせた嘘だったのかはいまだに謎だけど、そのまま2人で事務所近くの居酒屋「あぶさん」で飲んだのが初デート。優しい娘(こ)だなと思いましたね。その頃は親父たちも神戸に戻り、俺は事務所が借りた四谷のマンションに住んでいて、そこから少しの間だけ神楽坂の彼女のアパートに住みました。

 その後は20年近く中野区内のマンションを転々としている。こだわっているわけじゃないんだけど、昔は中野在住の先輩芸人が多くて憧れていました。でも、売れるとみんな目黒とかに移っちゃう。いま中野在住の芸人って、俺と松村邦洋くらいじゃない?(笑)でも、便利だし、いい場所だから離れがたいよね。

〈順風満帆だったが、90年代末期からお笑いだけで芸能界を生きることに対して漠然とした不安を感じ始める。そんな時、友人のプロレスラー川田利明に引き合わせられたのが、最もお世話になっている志村けんだった。〉

志村けんの一言で人生が決まったという上島さん 事務所提供

 98年頃かな。麻布で志村さんと飲んでいるからと、川田さんに電話で誘われたんです。志村さんと会ったら「最近、ネタやってないな。『バカ殿』に呼んであげるよ!」って。あれほどの方が俺らを気に掛けて下さっているのが嬉しかった。3日後には『バカ殿』の予定が本当に入っていて驚きましたよ。

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 その頃、ジモンが趣味のスニーカー・コレクションなどで注目されてピンで番組に出ていて、俺は無趣味でいいのかと悩んでいてね。でも、志村さんは「本当に好きなのはお笑いだろ! 好きでもないことをやる必要ない」と言って下さって、一生お笑いでいくと決めました。