昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

source : 提携メディア

スクリプトどおりにメッセージを残し、リストにチェックを入れる。メッセージを聞いて折り返しかかってきた電話は、同じフロアの別の部署につながるようになっている。こちらはひたすら発信だけを行なう。

一生を左右するかもしれないのに…笑い混じりの軽い返事

午前中は留守番電話になるばかりだったが、午後になると本人が出るようになった。

「メリルガン証券採用担当・吉川と申します。先日は面接にお越しいただきまして、ありがとうございました。採用させていただきます。今後のスケジュールにつきましては別途お話しさせていただきますので、ご都合のよろしいときに、これから申しあげる番号にご連絡いただけますでしょうか。番号は、03–55××–××××、です。それではご連絡、お待ちしております」

折り返しの電話番号はメモしやすいようゆっくり言った。それがおかしかったのだろうか、学生が笑った。

次につながった学生は社名を言うと、

「ああ、はい、はい」

と軽く答え、

「これから申しあげる番号にご連絡いただけますでしょうか。番号は03–55××–××××です」

電話番号のところを丁寧にゆっくり言うと、

「わかりましたぁ」

笑い混じりに明るく返された(※1)

※1:明るく返すのはいいことだと思うが、就職の内定連絡を受けたときには真摯(しんし)さも必要ではないか。私が新潟の会社に内定を断ったときは担当者に会って話した。担当者は冷えたブドウを出し、「東京で働いても新潟県人の心を失わないようにしてください」と言ってくれた。その人の名前は今でも覚えている。こんな私は古い人間なのだろうか。

それからは留守番電話になったり本人につながったりしたが、その中のひとりが、

「は〜い、わかりましたぁ〜」

と、また笑い混じりの軽いノリで答える。

一生を左右するかもしれない内定の連絡に、なぜこんなにもリラックスしているのだろう。内定の連絡を受けるときは緊張し、自然と言葉づかいも丁寧になるのではないのか。それとも私の話し方に問題があるのか。わからないまま初日は終わった。

z