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「地の果てでもどこでもついて行く」妻・純子さんが語るムツゴロウさんとの70年 結核、麻雀、無人島、借金、そして…

「地の果てでもどこでもついて行く」妻・純子さんが語るムツゴロウさんとの70年 結核、麻雀、無人島、借金、そして…

ムツゴロウさんと純子さん #1

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 2022年4月17日で87歳となった“ムツゴロウ”こと畑正憲さん。現在の暮らしぶりや、ライオンに食いちぎられた中指のこと、70歳を過ぎて背負った借金3億円の完済秘話、麻雀伝説を語ったインタビューは大反響を呼んだ。ムツゴロウさんが破天荒な人生を語る間、それを横で笑顔で聞いていたのが妻の純子さんだった。

 ムツゴロウさんと純子さんは大分の中学校の同期生で、2人は23歳のときに結婚。中学2年生で交際を初めて以来、一緒に過ごした時間はすでに70年を超えている。その間にはムツゴロウさんによる突然の無人島移住宣言や、北の大地での動物たちとの共存生活など、さまざまな事態が勃発。ムツゴロウさんが引き起こす起伏に富みすぎた生活を、純子さんはどのように生きてきたのだろうか。2人が過ごした70年間を、純子さんの視点で振り返る。

ムツゴロウさんと純子さん。中学2年生の時から70年以上の時間をともに過ごしてきた ©文藝春秋

――お久しぶりです、お変わりありませんでしたか。

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純子 こんな遠くまでまた来てくれたんですね。畑の話がそんなに気に入ってくれたんですか。

ムツゴロウ 今日はね、お前さんが主役だよ!

――そうなんです。ムツゴロウさんと70年間一緒にいる純子さんも相当ただ者ではないような気がしていまして……。

純子 ええ、私ですか(笑)。でも何をお話ししたらよいんでしょう。畑とは結婚して60年以上、中学で出会ってからは70年以上も付き合っているのでお話しすることはいっぱいありますが……。最近も「この家の下には泉脈があるから温泉が掘りたい。馬と温泉に入りたいんだ」なんて言われて驚かされました。そういう行動の読めないところが畑の魅力だとは思っているんですけどね。

お互いが話す時も、隣で聞いている2人 ©文藝春秋 撮影・鈴木七絵

出会いのきっかけは「あんた、お喋りだね」

――お2人は中学2年生、14歳の頃から交際されているんですよね。当時のムツゴロウさんの印象はどんな感じだったんですか?

純子 同じクラスになったことはなかったんですが「とても頭のいい人がいるらしい」という話が別のクラスまで聞こえてくるような人でした。なので、とにかくスゴイ人なんだろうと思っていました。当時は戦争が終わった直後ですからみんな丸坊主で、服だってボロボロ。畑は背が大きいわけでもないですけど、それでも何かと注目を集める人でしたね。

©️文藝春秋 撮影・鈴木七絵

――クラスが違う2人はどうやって接近したのでしょう。

純子 別々のクラスでどちらも級長をやっていて、級長たちが集まる会で知りあって少し話すようになりました。しばらくして、畑が私のクラスに来て「あんた、お喋りだね」ってメモを渡されました。当時は級長でよく意見を言ってましたからね。それでメモを見たら、畑を含めて男子の名前が4人か5人書いてある。つまり私がその中で誰を選ぶかっていうメモなんです。私も押しに弱くって(笑)、畑の名前にチェックして返したような記憶があります。

ムツゴロウ それは覚えてないなぁ。でも僕はね、女房のことは小学校の時から知ってましたよ。当時は小学校は男女別だったんですが、たまに一緒に授業を受けることがありました。その時に女房がクラスの中で目立ってたんですよね。女子生徒のリーダー的な立場で、いつも10人ぐらいを引き連れていましたから。

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