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小学5年生の帰国子女の娘がクラスで浮いた存在に…日本人特有の「同調圧力」に悩む38歳の母親に鴻上尚史が答えた“2つの戦略”とは?

『鴻上尚史のほがらか人生相談 息苦しい「世間」を楽に生きる処方箋』より

2022/05/29
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 ニュースサイト「AERA dot.(アエラドット)」で掲載している鴻上尚史氏の人気連載を書籍化した『鴻上尚史のほがらか人生相談』シリーズ。読者の悩みに対して真摯に向き合い、優しく語りかけるような鴻上氏の回答の数々は、毎回大きな反響を呼んでいる。

 ここでは、シリーズ第1作目の『鴻上尚史のほがらか人生相談 息苦しい「世間」を楽に生きる処方箋』(朝日新聞出版)から一部を抜粋。日本特有の「同調圧力」によって、小学校5年の娘がいじめられそうだと悩む38歳の母。そんな彼女に対して、鴻上氏が贈ったアドバイスとは——。(全2回の2回目/1回目から続く

鴻上尚史 ©文藝春秋

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個性的な服を着た帰国子女の娘がいじめられそうです。普通の洋服を買うべきですか? 38歳・女性 フォトグラファーの悩み

 小学校5年の娘がいる母親です。夫も私も写真家で、半年前までの6年間、家族はアメリカに在住していました。娘はおしゃれな夫の影響を受けて洋服に興味があり、ビビッドなカラーのものを好んで着ていましたし、ダンスが好きでその衣装も自分で作ったりするほどおしゃれ好きで活発な女の子でした。

 日本に戻るとき、もしかしたらと夫と不安に思っていたのですが、案の定、でした。日本の学校に通うようになって、1カ月半くらいして、悲壮感いっぱいの顔で娘が「服を買い替えたい」と訴えてきたのです。どうやら教室の中心にいるような女の子から「服が派手すぎない? 誰もそんな色着ないよ」と言われたのをきっかけに、クラスの目が冷たくなっていったようです。最初は「かわいい服だね」と羨ましがられていたはずなのに、突然、浮いた存在になってしまったのです。

 話を聞いた夫は怒った口調で、「人目なんて気にせずにおまえらしく好きな服を着ていけばいい。同調してつまらない人間になるな」と言いますが、現実を考えれば娘にとって、酷な言葉ではないでしょうか。私だって、いままでどおり娘に自由に好きな服を着てほしいと思いますが、クラスでいじめにでもあったらと気が気ではありません。

 新しい(よくある)服を買ってクラスに馴染むようにするのが娘のためなのか、これまで通りの自分をつらぬいて強い気持ちをもつよう諭すのがためなのか、とても迷っています。鴻上さんのご意見をお聞かせください。