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「俺の前にフリの人がいて成立するんですよ」取材中、上島竜兵さんの笑顔がフッと消えた瞬間

2022/05/20
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「上島竜兵、○歳。代表作、これといってなし!」

 決めゼリフのひとつだったが、そんなことはまったくなかったのは誰もが知っている。

「殺す気か!」「訴えてやる!」「どうぞどうぞ」「くるりんぱ」……カンニング竹山や出川哲朗を相手にしたキス芸に泣き芸、そして熱々おでん……どれもこれも代表作にして不朽の名作と呼ぶべきギャグと芸である。

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 どこまでもくだらなく、限りなくスベるはずなのに、間違いなく笑わされてしまう。どこかでキメてくれなければ、その場がなんとも締まらない。テレビのチャンネルを変えている最中に彼の姿を見掛ければ、リモコンの手を止めてそのまま見入ってしまう。

 そんな稀有な存在だった。

 彼のことが嫌いな人なんて、果たしていたのだろうか?

 こんなふうに彼がいなくなってしまうなんて、誰が想像できたろうか?

 2017年12月。著名人に住んできた家を軸に軌跡を振り返ってもらう「週刊文春」の「新・家の履歴書」で、ライターとして上島竜兵さんを取材した。

上島竜兵さん ©文藝春秋

衝撃を受けた「人間性クイズ」

 世代によって違うとは思うが、現在49歳の俺が彼を強く意識したのは『ビートたけしのお笑いウルトラクイズ!!』(日本テレビ、1989~1996年)だった。そのファースト・コンタクト&ディープ・インパクトから、約30年にわたって笑わせてもらってきた人物だけに緊張してガチガチになっていた。だが、あの柔和な笑顔を向けられた瞬間に緊張が解け、後輩芸人たちから“太陽様”と慕われているのが納得できた。

『お笑いウルトラクイズ』で最初に衝撃を受けたのが、ポール牧から猛烈なセクハラを受けながらも、上島が積極的に乗っかっていくという“逆ドッキリ”を仕掛ける「人間性クイズ」。現在ならばコンプライアンス案件の企画ではあるが、躊躇なく浴衣を脱いで全裸になり御大に向かって甘い声を出す上島、狼狽するポール師匠。その絵面のインパクトは相当なものだった。