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「イージス・アショア」を理解するための6つの質問――日本のミサイル防衛システムは新たな地平へ

導入が閣議決定された新システムを徹底解説

2017/12/19

 日本の新たなミサイル防衛システムとして、地上配備型のイージス・アショアの導入が閣議決定された。取得費用は1基あたりおよそ1,000億円と見られており、2基導入が計画されている。

1) そもそもイージスって何?

 イージスの語源アイギスは、ギリシャ神話に登場する主神ゼウスの持つ盾で、あらゆる邪悪を防ぐと言われている。その名の通り、様々な脅威に対抗可能なシステムとして生まれた。

 開発が始まったのは1963年。まだベトナム戦争にアメリカが本格介入する前で、既に半世紀以上経過している。この時は予想されうるソ連の多数の攻撃機による対艦ミサイルの統制された同時攻撃から、味方の空母機動艦隊を守ることを目的としていた。このために重視されたのがリアクションタイム短縮と同時対処能力の確保だった。

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 これを実現するために、SPY-1フェイズドアレイレーダー(艦橋前後に4面貼り付いている8角形の物体)と高度な情報処理を組み合わせ、多数の目標を同時に探知・識別し、艦対空ミサイルを発射・誘導できるイージス艦が誕生したのは1983年。いわば空母機動艦隊の盾として、多数の空からの脅威を防ぐ、「目」と「槍」の機能を1隻にまとめた艦船なのだ。

海上自衛隊のイージス艦(手前と奥)。艦橋にある8角形がSPY-1レーダーのアンテナ(筆者撮影)。

 すでに100隻以上のイージス艦が米海軍で就役し、日本、スペイン、ノルウェー、韓国、オーストラリアでも導入、または導入計画が進んでいて、艦船用システムのベストセラーとなっている。

2) イージス・アショアって何?

 イージス・アショアは、イージス艦のシステムを陸上に移したもの。海洋を移動可能なプラットフォームとしての柔軟性は失われるが(ただし、時間はかかるが移設は可能)、常に警戒・発射可能な即応体制を構築可能で、航行に必要な人員も確保しなければいけないイージス艦と比べて人的リソースは少数で済み、低コストで運用できるとみられる。

 元々、イージス・システムは、前述したように空母機動艦隊を守る軍艦用のシステムだった。しかし、海上自衛隊でイージス艦導入に携わった大熊康之元海将補によれば、「現時点で予測不可能な脅威を撃破するために、後日必要となる新しいウエポンとウエポンシステムの統合化された増備が可能」であることがイージスの重要な設計思想だという。これにより、元々考えられていなかった弾道ミサイル防衛に対しても、イージスはソフトウェア改修や装備の増設等で対応出来る。

ハワイ・カウアイ島のイージス・アショア実験施設 米ミサイル防衛局サイトより

 イージス・アショアは、弾道ミサイル等の脅威に対するミサイル防衛を担う施設として、日本に導入されようとしている。北大西洋条約機構(NATO)はイランの弾道ミサイルを想定して、2015年にルーマニアに配備、2018年にはポーランドにも配備を計画している。