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88歳“きくち体操”の伝道師が語る「足の指を使えていないと全身が衰える」理由

「文藝春秋」2022年6月号より、「きくち体操」の創始者である菊池和子氏の「88歳『きくち体操』の伝道師」を一部転載します。

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自分を変えられるのは自分だけ

 この春に米寿(88歳)を迎えましたが、今も1時間15分の「きくち体操」の授業に立っています。

 ただ動いて見せるだけでなく、スタジオ前方に置いた人体図を指しながらその動きの意味を説明し、生徒さんたちに声をかけて回ります。締めは「また来週、生きていれば来ますよ」と言うのがお約束。この歳だと冗談ではないわね(笑)。毎回が真剣勝負です。

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 赤いカシュクールシャツに黒のレオタード姿がトレードマークの私のことを、新聞広告でご覧になったという方もいらっしゃるでしょう。50代以上向け女性誌「ハルメク」に2007年から出させていただくようになり、今では全国的に「きくち体操」を知っていただくようになりました。

菊池和子氏 ©文藝春秋

 きくち体操の歴史はそれよりずっと古くて、中学校の体育教師を辞めて体操教室を始めたのは、半世紀以上前のことです。団地の集会所でひっそり始めた教室が、1度も宣伝をしたことがなかったのに、口コミでここまで広まってきました。これまでにない体操だったからでしょう。

 この半世紀の間には数々の健康ブームがあり、健康器具や運動法が流行っては廃れていきました。「あれで健康になれるんだったらずっと売れるはずよ」といつも言っていますが、どれも人の体が金儲けに使われるだけで、モノに頼って体が良くなることはありません。

 ヒトに頼るのも同じようなものです。いくら「愛している」と言ってくれる人がいたとしても、代わりに動いたり食べたりしてもらうことはできませんからね。

 結局、自分を変えられるのは自分だけです。

 きくち体操の特色は、「脳」を使って体を動かすことです。単に体を伸ばすストレッチとか、運動選手のように走るとか投げるといった目的で筋肉を鍛えるのとは違います。

人体図を使って筋肉の動きを説明 ©文藝春秋

 まず体の仕組みを理解し、脳で使いたい筋肉を意識して動かし、自分の体の弱っているところを自分の力で良くしていく。それができるようになると、この世に2つとない自分を愛せるようになります。

 その方法を変わることなく教えてきたのが、きくち体操なのです。

 私のことをお話しする前に、きくち体操で行っていることを少しだけ実践してみましょうか。

体操で「脳」を使う

 まず、椅子に腰かけるか、床の上で長座になってください。長座のほうが難しいので、最初は無理のないほうで試してくださいね。

 片方の足を、反対側の腿に乗せます。背筋を伸ばした状態で足裏を見ることができる人は、股関節がちゃんと機能している証拠です。逆に小指の裏まで見えない人は、股関節が弱っています。

 そして、足指を左右に開いたり前後にぐるぐる動かしたりしてみましょう。このとき足指の感覚をしっかり感じ取ることが大切です。

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