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「4日後に辞めてもらうことになりました」リクシル社長に突然すぎる“クビ宣告”…日本有数の大企業で起きた“疑惑の社長交代劇”

『決戦!株主総会 ドキュメントLIXIL死闘の8カ月』より #1

2022/06/09

source : 週刊文春出版部

genre : ニュース, 社会, 企業, 経済

 2018年10月31日、LIXILグループ(現LIXIL)は突如として瀬戸欣哉社長兼CEOの退任と、創業家出身の潮田洋一郎取締役の会長兼CEO復帰を発表。外部から招へいした「プロ経営者」の瀬戸氏を創業家が追い出す形となった。しかし2019年6月25日、会社側に戦いを挑んだ瀬戸氏が株主総会で勝利し、社長兼CEOに“復活”する。

 ここでは、一連の社長交代劇の裏側に迫ったジャーナリスト・秋場大輔氏の著書『決戦!株主総会 ドキュメントLIXIL死闘の8カ月』(文藝春秋)から一部を抜粋。瀬戸氏が社長退任を告げられた経緯とLIXILグループの内部事情を紹介する。(全4回の1回目/2回目に続く

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ローマを訪問したLIXILグループ社長兼CEOの瀬戸欣哉

 10月のローマは気温が東京とほぼ同じで湿度は低い。旅行のベストシーズンといわれるそんな時期に、LIXILグループ(現LIXIL)社長兼CEO(最高経営責任者)の瀬戸欣哉は仕事で訪れていた。2018年のことだ。

LIXILグループ(現LIXIL)社長兼CEO(最高経営責任者)の瀬戸欣哉氏 ©文藝春秋

 新型コロナウイルスが全世界で猛威を振るう前まで、瀬戸は月の3分の1、多い時は半分くらいを海外で過ごし、各地に散らばるLIXILグループの経営幹部と話し合う日々を送っていた。今回のローマ訪問はカーテンウォールを手がける子会社、ペルマスティリーザの社長であるリカルド・モロと面談するのが目的だ。

 一般に大企業トップの海外出張には経営幹部や秘書といった帯同者がいるものだが、瀬戸はほとんど1人で行動する。今の時代、たくさんの部下を引き連れて大名旅行のような出張をするのは時代錯誤と考えるからだが、他にも理由があった。1人になれるからだ。

 瀬戸は会社の実情を細部に至るまで可能な限り自分で把握したいと考えるタイプの経営者である。必要と思えば昼夜を問わず幹部に電話をかけたり、メールをしたりして、情報を吸い上げる。手を尽くして集めたものを頭の中で整理し、考え抜いて経営の方向性を示す。決断はできる限り早く、間違いだと気づけば修正する。時間をかけるのは悪だとすら考える合理主義者だ。

 経営者には連日会食の予定を入れて人脈を広げることが仕事の1つと思う人も少なくない。しかし瀬戸は考える時間の方が大事だと思っているから、親睦を深めるぐらいの意味しか持たない会食はなるべく避ける。床に着くのは夜10時くらい。平均睡眠時間は7、8時間とやや長めで、朝5時には起きる。それから1時間ほどかけて、その日にやるべきことの優先順位を付け、仕事に取り掛かる。休日は家族団欒を優先するのでゴルフはしない。

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